生命保険・保険金の遺産相続対策・評価・売却について
「みなし相続財産」となる生命保険
親や夫、妻などが亡くなった際に受け取る生命保険金は被相続人(亡くなった方)が所有していた財産ではないので、本来、相続財産には含まれません。しかし、生命保険金も本来の相続財産を取得するのと同じ様な経済的価値と判断されるために、相続税法では相続や遺贈によって取得した財産とみなして課税をされるように定められています。これを「みなし相続財産」と言います。生命保険契約に関して、みなし相続財産として扱われるものは以下の2点になります。
■生命保険金、損害保険金
被相続人の死亡によって受け取る生命保険金や損害保険金(いわゆる死亡保険金)のうち、非相続人が保険料の費用を負担していたもの
■生命保険契約に関する権利
妻自身を被保険者とする生命保険に加入し、保険料を夫が支払っていた場合、夫が死亡しても保険金は支払われません。しかし、夫が死亡した時点で保険契約の権利が妻に移転したという扱いになります。相続時に保険の支払いが発生していない契約で、保険料を負担していた夫と、実際に契約をしていたのが妻である場合、契約者である妻はその権利を相続または遺贈によって取得したものとみなされ、相続税が課税されます。なお、夫が契約者であり保険料も負担していたものは、本来の相続財産として課税されます。
相続税が非課税となる生命保険の保険金
相続によって取得したとみなされる生命保険金や損害保険金のうち、
[500万円×法定相続人の数]が非課税となります。ただし、保険金の取得者のうち、この非課税枠が適用されるのは相続人だけということです。したがって、多額の保険金をもらったからと相続放棄した人や相続人で無い孫などの受け取り保険金は全額が課税されることになります。全ての相続人が取得した保険金の総額が非課税限度額内に納まったのであれば、各相続人とも全額が非課税となります。
相続税対策としての生命保険
生命保険の相続税対策のメリットとしては、1.非課税の特典がある(前項参照)、2.相続時に現金で支払われるため、現金支払の相続税の資金に利用できる、3.継続する保険料の支払いにより、相続財産の現象が見込めるの3点です。以下に賢い生命保険の活用方法をご案内します。
■非課税の特典が適用される生命保険の加入のしかた
前項でご説明した、相続人の生命保険の非課税枠の適用ですが、それを利用するためには、契約者と被保険者が同一で、受取人を相続人とする契約形態でなければなりません。一般的には、父親の相続に備え、契約者と被保険者を父、受取人を母または子とします。その場合、母は配偶者の税額軽減により納税額を0にすることも出来ますので、納税資金の確保を目的としての保険に加入するのであれば、子供を受取人にするのが基本です。また、母の生活保障が単独で必要であるのならば別途保障を用意しましょう。
■生命保険金を受給して相続税の支払いに充てる
現金の財産は無いが、不動産が相続財産として遺されているという場合は多くあります。その場合でも、不動産の評価額に準じて、税務署に相続税を現金で支払わなくてはなりません。そういった場合は、相続人の貯金や不動産を売却して相続税に充当するのですが、被相続人が生命保険に加入していた場合、亡くなった時点で保険料が現金で支払われるため、不動産を売却せずとも相続税を支払うことができるようになる可能性があります。
■保険料の支払により相続財産を減らす
その理由としては、生命保険に加入をすれば払い込み保険料以上の死亡保険金を受け取ることになります。払い込み保険料で相続時の財産を減らし、受け取った死亡保険金が非課税になるのですから、時差はありますが、トータルで考えると実際の財産は増えているにもかかわらず、支払った保険料の分だけ課税財産が減少するという効果があるのです。
「相続 専門家プロファイル」へご相談ください。
※専門家の紹介、また、専門家からの提案・見積りは、無料でお使いいただけます。実際にお仕事を発注する段階で金額などは専門家と個別にご相談ください。
生命保険・保険金の遺産相続対策・評価・売却についてに関するコラム
-
保険の指定受取人とその相続人となるべき者が同時死亡した場合【コラム】生命保険の指定受取人とその相続人となるべき者が同時死亡した場合における指定受取人の相続人の範囲(最判平成21・6・21民集63巻5号953頁) 本件は、夫が被保険者で、保険金受取人が妻である…
- 村田 英幸
- 弁護士
-
死亡保険金を代償金支払いの財源として利用する方法【コラム】死亡保険金を代償金支払いの財源として利用する方法 前述の通り,代償分割を利用できれば,後継者に事業を承継させる手段となりますが,代償金の支払いが後継者にとって大きな負担となります…
- 村田 英幸
- 弁護士
-
相続の放棄と生命保険金被相続人に借金があり、財産より借金が多ければ、相続を放棄することができます。相続を放棄した場合に、被相続人の生命保険金の受取人が相続人であるときは、相続人は生命保険金を受け取ることができます。保険金…
- 執筆専門家
- 佐々木 保幸
- 税理士
-
保険金は誰のもの被保険者の死亡に際して、生命保険会社または損害保険会社は死亡保険金を支払います。 これを俗に保険金といいます。 通常、契約の際に保険金受取人を定めます。 保険会社は、その受取人に保険金を支払いますの…
- 執筆専門家
- 大黒たかのり
- 税理士
-
死亡保険金の判例こんにちは。吉田行政法務事務所の吉田です。 「死亡保険金」は、相続財産に該当しない、というのが原則です。 しかし、死亡保険金の受取人である相続人と他の相続人との間で著しい不公平がある場合、以下のよう…
- 吉田 武広
- 行政書士
-
死亡保険金について(判例)CTRL+Vこんにちは。吉田行政法務事務所の吉田です。 さて、相続財産に「死亡保険金」は該当しないのですが、他の相続人とのバランスを注意することが大事です。 平成16年10月29日最高裁で以下のような判…
- 吉田 武広
- 行政書士
-
年金型生命保険をお受け取りの方!!まだまだ解決できていない方がいます!! 年金型生命保険金についての最高裁判決の件です。 所得税の還付となるケースがかなりあるはずです。 日本経済新聞(2010.7.18)によりますと該当件数は日本…
- 執筆専門家
- 大村 貴信
- ファイナンシャルプランナー
-
- 職種
-
年金払い保険への二重課税を認定昨日、年金払い型の生命保険に所得税と相続税をかけるのは二重課税だと争った裁判でが最高裁で判決がでましたね。判決は約40年以上続いてきた課税実務を覆し原告の主張を認める判決となりました。それに伴い、今…
- 執筆専門家
- 植森 宏昌
- ファイナンシャルプランナー
-
名義を変えれば、贈与税の心配ナシ!いつも楽しみに拝見しております。 前回(9月19日)の贈与税に関するコラムで、 保険は相談者の名義になっているということですが、 お答えにある「名義をかえるだけで、贈与税の心配はなくなりました」 …
- 伊藤 誠
- ファイナンシャルプランナー
生命保険・保険金の遺産相続対策・評価・売却についてに関するQ&A
-
保険金受取人についてはじめまして。保険のしくみがわからず相談させていただきます。保険契約者=祖母(存命)、被保険者=祖父で先日祖父が亡くなりました。保険料は全納で祖母が死亡後の受取人です。法定相続人が(実娘=母)他に居る場合で…
- 林 高宏
- 税理士
-
相続した?主人名義のお金はじめまして。詳細が不明なので、わかる範囲で質問したいのですが、主人のお父様が10年以上前に亡くなり、その時、多分保険金だと思われるのですが、主人のお母様と主人(長男)と主人の妹(長女)にそれぞれお金…
- 藤本 厚二
- ファイナンシャルプランナー
-
死亡保険金と退職金の受取人先日夫が突然死しました。そこで、死亡保険金と退職金を受け取る権利のある者について質問です。夫には先妻との間に現在16歳の子が1人います。私との間には夫死亡時に胎児だった子(夫死亡から31日後に出生し現在生…
- 三島木 英雄
- ファイナンシャルプランナー
-
嫁が先に亡くなり、旦那が2週間後に亡くなりました。相続は?嫁が先に亡くなり、旦那が2週間後に亡くなりました。この二人には、子供がいません。遺言もありません。お互いの保険金の受取人は、嫁は旦那旦那は嫁になっていました。保険額は、嫁の保険は100万円旦那の保険は、1…
- 羽柴 駿
- 弁護士
-
保険金の受取人について先日兄が亡くなり、生命保険の受取人ついて教えてください。兄は独身で私たち両親もすでに他界しています。その為保険金受取人は姉妹兄弟になりますが私たち(亡くなった兄、私、妹)の他に異母兄弟がいます。その…
- 松野 絵里子
- 弁護士
-
相続で発生した火災保険の名義変更の手続き遺言で家は妹に100%相続されました。その火災保険(積み立て型)の名義変更にあたり、遺言で特に言及されていなかったと言う理由で、JA農協より関係者全員の印鑑証明、戸籍謄本などを要求されています。火災保…
- 広川 明弘
- 行政書士
-
生命保険契約を相続する際の受取人について生命保険のことでご相談します。今回、数年前に死亡した父が契約者の保険を母に名義変更することになりました。その保険は父が契約者兼受取人で、母が被保険者の死亡保険金が1000万のものです。母は今回の名義変更…
- 松野 絵里子
- 弁護士
-
相続に関する生命保険受取について年明け早々祖父が他界し、祖母、母、叔父(母弟)の3人が相続します。課税対象は約1億2~3000万程度になる模様です。(自宅は小規模宅地の特例適用済み、生命保険は非課税枠1500万差し引き済み)母は祖父から生命…
- 回答専門家
- 沼田 順
- ファイナンシャルプランナー
-
公正証書による遺言書について母親の財産について、子である私に全て残す、との内容の公正証書の作成を考えております。実際には、公証人役場へ相談に行こうと思いますが、その母親の財産の内容につきお教えください。(家族構成は父、母、私の…
- 内田 清隆
- 弁護士
-
団体信用生命保険と相続放棄借金がある人間が死亡した際、その家族達は相続放棄を選択できると思うのですが、団体信用生命保険が適用となってローンがなくなった住宅は、相続の対象となって、放棄しなければならなくなるのでしょうか?ちなみ…
- 吉野 充巨
- ファイナンシャルプランナー