遺産相続に関する民法基礎知識
民法基礎知識1 - 相続
ここでは、いったい誰が亡くなった方の財産を引き継ぐことが出来るのか、また、その権利はどのように定められているかをご紹介します。
相続人は、子、父母、兄弟姉妹の順に相続権を得ることができます。(配偶者は常に相続人となり得ます。)ただし、亡くなった方を殺害・脅迫などの一定の理由を犯した者は相続の対象とはなりません。これを「相続欠格者」といいます。本来、相続を受けることが出来る者で相続欠格者が出た場合は、代襲相続といい、姪や甥も相続人となることがあります。また、民法で定められたルールを逸脱していなければ、遺言によって相続人の廃除をすることも可能です(民法892~894条)。
相続人は被相続人(亡くなった方)の財産に属する一切の権利・義務を継承します。遺言が残されていない限り相続人同士が自由に分割協議をすることが可能ですが、その間で紛争が起きた場合には民法によって各相続人が継承する財産の割合が定められています。
相続人は財産に属する一切の権利・義務を有しますが、借金などマイナスの財産が多い場合は、プラスマイナス含め一切の相続を放棄できるという事も民法で定められています。その場合は被相続人が亡くなってから3ヶ月以内の手続きが必要となります。
被相続人が遺言も無く、また相続人も存在しない状態で亡くなった場合には特別縁故者への分与が認められています。この場合は、他に財産分割をする者がいないため、全ての財産が申し出た特別縁故者へ渡されることになります。また、特別縁故者すら存在しない場合は、財産は国庫となるように定められています。
民法基礎知識2 - 遺言
あまり知られてはいませんが、遺言は15歳から遺すことができる、民法961条で定められています。遺言制度は本人の意思を尊重することから、代理人制度は認められていません。遺言は民法で定められた形式に則って作成をしなければ無効とみなされます。また、遺言作成者は自分の意思を最大限尊重してもらえるため、いつでも作成した遺言の取り消しが可能です。その場合は新たに遺言を作成するか、破棄すればよいとされています。
亡くなった時の遺言執行者についても民法1006条から定められています。必ずしも指定しなければならないというわけではありませんが、「争族」となりやすい相続ですから、遺言内容を円滑に進めるために、自分にとって利害関係の無い弁護士、司法書士等の法律専門家を遺言執行者として利用することも賢明な策と言えるでしょう。
民法基礎知識3 - 遺留分
被相続人が遺言で、「自分の全ての財産を非嫡出子に譲る」と遺していたらどうなるでしょうか。それが莫大な財産だった場合、問題となるでしょう。そのようなリスクを回避するために、民法では定相続人には、必ず受取ることのできる最低限法定相続人には最低限度の相続財産を得る権利が規定されています。この権利のことを「遺留分減殺請求」と呼んでいます。なお、遺留分減殺請求の権利は、被相続人の兄弟姉妹にはないので注意が必要です。
遺留分減殺請求には時効があります。遺贈・遺留があったと知ってから1年以内に侵害している相手方に請求しなければなりません。また、法定相続人がそのことを知らなくとも10年が経過した場合は消滅してしまいますので、注意しましょう。
自分に遺された遺留分を放棄したい場合は、家庭裁判所の許可が必要です。これは、遺留分の放棄を法定相続人が強制したり、放棄の有無について争いが発生しないように設けられている措置になります。なお、相続開始前に遺留分を放棄する相続人が出ても、他の相続人が遺留分減殺請求することによって得られる額が、その分増えるわけではないので、自分の相続分が増えるというわけではないことを理解してください。
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