無いと不満につながる「衛生要因」が増えてきていないか
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アメリカの臨床心理学者であるハーズバーグが提唱した「二要因理論(動機付け・衛生理論)」というものがあります。
人間の仕事における満足度は、ある特定の要因が満たされると満足度が上がり、不足すると満足度が下がるということではなく、満足に関わる“動機付け要因”と、不満に関わる“衛生要因”があり、これらはそれぞれ別のものであるとする考え方です。
“動機づけ要因”は、それがあることが満足につながり、“衛生要因”は、それがあって当たり前で、足りないと不満につながるということです。
“動機づけ要因”にあたるものとして挙げられているのは、「達成」「承認(成果が上司に認められるなど)」「仕事そのものへの興味」「責任(大事な仕事を任されるなど)」「昇進」「成長」など、“衛生要因”の方では、「会社の政策と管理」「監督技術」「監督者との関係」「作業条件」「給与」「同僚との関係」「部下との関係」などが挙げられています。
この理論自体は、問題点が指摘される部分もあるようですが、最近の会社事情に当てはめて見てみると、ちょっと気になることがあります。
満足度が上がる“動機づけ要因”より、無いことが不満につながる“衛生要因”と捉えられる事柄の方が多く、なおかつその比率が増えてきているのではないかということです。
例えば、労働条件や給与のような会社の制度は、どちらかといえば“衛生要因”として見られます。休みが増えたり給与が上がったりしても、それがやる気につながるの一時的で、すぐに当たり前の“衛生要因”となってしまいます。
企業の人事制度などにおいても、仕組みがあること自体が“衛生要因”だと言われてしまうと、それを通じてやる気につなげるのは難しいということになります。
動機づけのためには制度運用のしかたが大事だというのは、そんなところにも理由がありますが、最近はいくら運用上の工夫をしても、なかなかやる気にはつながらず、“衛生要因”と捉えられることが多いように感じます。
マネジメントにおいても、上司や監督者との関係は“衛生要因”だとすると、上司のおかげでやる気が高まることは稀で、ちょっとした振る舞いが不満を招くことの方が多いということになります。部下が気分よく働けるようにマネジメントするのは当たり前だということなのでしょう。
私は、“衛生要因”というのは「他者への要求水準」に近いイメージで捉えています。そして最近は、これがいろいろな場面で高くなりすぎているような気がしています。俗に言われるクレイマーなどというのは、そんな傾向を表す一つの要素なのかもしれません。
私はこの“二要因理論”は、結局周りから与えられるものに対して一喜一憂しているだけのように感じています。自分自身のやる気の問題なのに、それを他人のせいにしている感じです。
会社としての環境作りが大事であることは確かですが、“動機づけ要因”を増やすことも、“衛生要因”を減らすことも、本人の捉え方次第で変えられることがあるのではないかと思います。すべてが会社のせいではないように思います。
このコラムの執筆専門家
- 小笠原 隆夫
- (東京都 / 経営コンサルタント)
- ユニティ・サポート 代表
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