「カリスマリーダー」は配慮が細かいという話
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少し前のことですが、「カリスマリーダーは細かい配慮もしている」と言う記事が目に留まりました。
従来から評価されてきたカリスマ型リーダーの行動を細かく研究したところ、彼らはトップダウンの強力な言動だけでなく、それと同じくらい細やかな配慮もしていることがわかってきたといいます。
様々な競技で著名な監督や指導者で、トップダウン型リーダーの典型のように言われる人たちでも、実はものすごく繊細な気配りをする人だったり、選手一人一人とバランスよくコミュニケーションをとるために、そのプランニングまでしていたりするそうです。
全体に向けては「俺の言うとおりにしろ」と強く発していても、陰では選手一人一人に「ぜひ君の意見が聴きたい」などと意見を求め、一対一のコミュニケーションを欠かさないような配慮をしている例が数多くあります。
優秀なリーダーは、自分で引っ張るリーダーシップと、部下を支援するフォロワーシップを状況に応じて使い分け、その方法のバリエーションが豊かだということが、研究で明らかになってきているとのことでした。
ある会社でこんな話を聞きました。新たに部門長に昇格させた者が、肩書がついた途端にパワハラ体質に変貌し、何でも高圧的な命令口調に終始して、部下たちが疲弊してしまっているそうです。
昇格推薦をした上司は、「そういうタイプの人間には見えなかったのですが・・・」と言って落ち込んでいました。
これは優秀でないリーダーの典型例ですが、こういうタイプの人は、ほとんどの場合が、「自分の○○のため」に活動しています。
前述の好ましくないリーダーが高圧的な態度に終始するのは、支配欲や権威欲といった「自分の欲求を満たすため」ですし、無責任で腰が引けた態度に終始するリーダーがいたとすれば、「自分の保身のため」となります。有無を言わせない態度は「自分の意見を通すため」「自分の思い通りに運ぶため」「自分のやり方にこだわるため」でしょう。指導するためのスキルが不足しているとも言えます。
これに対して優秀なリーダーは、「最高の成果を出すため」に活動します。強く引っ張ることや命令することが成果につながると思えばそうしますし、人の意見を聞いた方が良ければそうするでしょう。
優秀なリーダーは、偏った方法だけでは成果が出ないことを知っているので、その時の状況に合わせて様々な方法を使い分けます。個人的な欲求や感情には左右されません。そういう意味で、自分のことに対しては無欲と言えるのかもしれません。
スパルタ一辺倒で結果を出したリーダーも、かつてはよく見受けられましたが、もしその人がもっと柔軟に、多くのバリエーションを持ってメンバーと接していたとしたら、実はもっと簡単に、もっと早く、もっと高いレベルで結果が出ていたのかもしれません。少なくとも最近の研究成果ではそういうことのようです。
スポーツ界では、まだまだパワハラ的な指導が発覚して問題になることがあります。そういうことが続くのは、結局は指導者のスキル不足と勉強不足であり、そこから始まる自己中心的な態度であり、「最高の成果を出すため」には活動していない証明です。
本当に優秀なリーダーになるためには、もう少しいろいろ学び直さなければならないと思います。
このコラムの執筆専門家
- 小笠原 隆夫
- (東京都 / 経営コンサルタント)
- ユニティ・サポート 代表
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