「いつでも機嫌が良い」というリーダー資質
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ある会社の課長のお話です。40代後半くらいの男性ですが、いつお会いしてもとにかくにこやかで機嫌がいい人です。
怒っていたり、強い口調で誰かを責めたり、何か不機嫌そうな姿を見たことがありません。もちろん、はしゃいでいる、にぎやかという訳では感じではなく、単に明るいということでもありません。
良い意味で感情の起伏が少なくいつも穏やかで、喜怒哀楽の「喜」と「楽」が多く、「怒」はなくて、「哀」はあまり人前では見せない感じです。決して優等生ではなく、人並みに遊び、大きな声では言えませんが、多少のサボりもあったりします。
当然ですが、周りとの人間関係は良好で、彼のことを悪く言う人は見たことがありません。仕事ではエース格とまでは言えないものの、それなりに目標を達成し、真面目に課長の役割を全うし、部下からも信頼されています。
そんな彼に対して、会社や上司の評価として言われるのは、いつも「厳しさが足りない」です。「毅然とした態度ができない」「叱れない」「命令できない」「甘い」などという指摘をされます。
特に直属の上司が、昔ながらの体育会気質の人で、「リーダーがそれではダメだ!」と、よく発破をかけられています。
ただ、私はこの課長への指摘について、あまり賛同はしていません。
例えば、彼が課長として会社指示を部下に伝えるとき、一方的に押しつける言い方はしません。できるだけ納得を得られるように、場合によっては個別に事情をよく説明し、意見や反論があればよく聞き、意識のすり合わせをおこなっています。多少時間がかかっても手を抜きません。
また、実際に部下との間で、そこまで意見が対立することもありません。仕事でもプライベートでも、感情的にならずにきちんと相手の話を聞き、信頼を積み重ねているので、よほどのことがあっても「まあ課長が言うなら」と、部下の側から歩み寄ってきます。強い口調や命令、強制をしないので、見た目の「厳しさ」は不要なのです。
にもかかわらず、それが「リーダーらしくない」と、画一的なボス型のリーダー像を押しつけられています。
最近はずいぶん減りましたが、いつも「不機嫌」「怖そう」「威圧的」な雰囲気の社長や管理職を、まだまだ見かけることがあります。何となく近寄り難く、話しかけづらいですが、それがリーダーらしい威厳だという人がいます。
ただ、それはサル山のボスザルのように、相手を威圧して支配する原始的な組織であればいざ知らず、近寄り難い、話しかけづらい人には、結局入ってくる情報量が少なくなります。得られる情報が少なければ判断を誤る可能性は高まり、今のように変化の激しい時代では、リーダーとしての役割が果たせない懸念があります。
誰からも接しやすい「機嫌が良い人」には、情報が集まって判断が正確になったり、早く納得が得られて周りの行動が早まったりするなど、組織として数多くのメリットがあります。これからのリーダーに必要な資質ということができます。
いつも機嫌良くいるためには、何事にもカリカリ、イライラせずに、自分の心を整える能力が必要です。ちなみに、40歳を過ぎた男性は、本人が普通にしていても、周りからは不機嫌に見えてしまうそうです。年齢を重ねるほど意識的に振る舞う必要があります。
この課長のように、「いつでも機嫌が良くいられる人」は、今どきのリーダーとして見習わなければなりません。
このコラムの執筆専門家
- 小笠原 隆夫
- (東京都 / 経営コンサルタント)
- ユニティ・サポート 代表
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