私がまだ若かりし頃、企業勤務の時代には、「なぜ会社は人のやる気を失わせるようなことをするのだろう・・・」と不満を持つことがずいぶんたくさんありました。
待遇や評価などのありがちなことばかりでなく、ちょっとした情報開示の仕方、顧客への対応指示、お金の使い方、導入する設備、上司の素行、経営者の態度・・・。その他本当にいろいろです。
自分としては「こうした方が絶対に良い!」という考えがあって、その通りになればよいですが、もしも違うと「ああ、やる気がなくなる!」と思っていました。いま思えばクレイマーみたいな精神構造だったのかもしれません。
現在の私は組織には属さず、独立して仕事をしています。人事コンサルタントという仕事柄で、いろいろな企業で働く人たちから、ご自身の会社に関するお話を聴く機会があります。
数多くの方々にお話をうかがいますが、そこでは以前の私と同じように、「会社」「社長」「上司」が原因で「モチベーションが下がっている」「やる気が無くなる」とおっしゃる方が結構たくさんいます。
そんな中では、「あんなことに使うなんて無駄遣いだ」「経費節減をいうならこちらが先」というお金にからんだ話は意外に多く、業績ノルマが厳しかったり、あまり調子が良くない会社では、こういう人が特に多いように思います。
他にも「人には要求するくせに自分はできていない」など、経営者や上司に対する個人的な素行がらみの批判もよくあります。
確かに上に立つ者は、自分の言動も素行も律して行動すべきだとは思いますし、「他人に言うなら自分もやるべき」とも思います。
ただ、私が今の立場となって、その会社の状況を客観的に見るようになり、そこで昔の自分を思い浮かべながら思うのは、「自分のやる気を他責にすることの無意味さ」です。
やる気が出ない状態で仕事に向かうことがあったとして、その原因が会社や経営者や上司にあったとしても、そんなことは会社や経営者や上司の眼中にはありません。もしも自分のやる気が出ないせいで、仕事の能率が下がったりミスを起こしたりすれば、会社や経営者や上司たち以上に、結局は自分自身が損をします。
私が最近感心することとして、メジャーリーグの野球選手や、海外チーム所属のサッカー選手など、主に海外で活躍するスポーツ選手たちの態度があります。
メジャーでのプレーが保障された他選手の契約との関係でマイナー落ちしたり、オプション契約が行使されて年俸を増やしたくないとの理由で出場を見送られたり、監督の好みや相性など、決して合理的とは言えない理由で不本意な起用方法をされたり出番を失っていたりしますが、みんなそんなことに一喜一憂せず、自分のできることを淡々とこなして出番を待っています。まさにプロ意識ということでしょう。
もちろん自分からの働き掛けやアピールはするでしょうが、決して他者批判をせず、今置かれた状況の責任は自分にあると捉えています。その理由は、やはり自分のやる気やモチベーションを他責にしてしまうことの無意味さを良く知っているからだと思います。
会社勤めには不合理な部分があることも、そんなストレス解消のためには愚痴の一つも言いたくなる気持ちもよくわかりますが、少なくともそこでは、「自分のやる気を他責にすることの無意味さ」ということだけは理解しておかなければならないと思います。
自分のやる気は自分で出すしかありません。
このコラムの執筆専門家
- 小笠原 隆夫
- (東京都 / 経営コンサルタント)
- ユニティ・サポート 代表
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