「根気の続かない人」と「融通が利かない人」
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人事に関する支援をしていると、特に中小企業では、社員個人の評価が話題に上がることがあります。
どちらかと言えば、「困った」「どう処遇すればよいか」などのあまり良くない話が多く、その人への対応について、愚痴レベルから具体策の話まで様々です。
そんな中、数年前にある会社でこんなことがありました。
一人のマネージャーですが、物事には積極的にいろいろ身軽に行動するものの、周りの評価は「最後までやり遂げない人」だといいます。新しいことにどんどん手をつけるのですが、どれも中途半端で、たいがい未完で終わってしまうそうです。
初めのうちは行動的ですが、徐々に対応が鈍くなり、きちんと完了する前に根気が尽きてしまうようです。部下や周りの人に「後はよろしく」「任せた」などと言って、手を引いてしまいます。
会社としては、いろいろ指導してきたようですが、なかなか改善には至りません。
そんなマネージャーなので、大きな部署のマネジメントや重要な仕事は任せられません。組織変更を機に、比較的安定した業務の管理部門に異動させたそう、部下は中堅クラスの男性1名、シニアで短時間勤務の女性が1名という合計3名の体制です。
ただ、この部下の男性社員も、社内ではちょっと扱いに悩んでいる人材です。周囲の評価は「融通が利かない人」で、事務処理能力は高いものの、とにかく何か新しいことが苦手だそうです。変化を嫌がり、新しいことを極力避け、今までの仕事のやり方に強くこだわるので、今までの上司はみんな手を焼いてきたそうです。
そんな二人が同じ部署になったわけですが、会社としては意図的にやってことで、言い方は悪いですが「対外的な問題にならない部署に、問題社員をまとめてしまおう」という発想だったようです。
しかし、そこで思いがけない化学反応が起こります。「最後までやり遂げない」マネージャーですが、その反面、「新しいことへの好奇心は常に旺盛」です。新たな部署になり、既存の事務処理の流れがいろいろ気になったらしく、どんどん改善提案を出してきます。
また、「根気の続かない人」ではあるものの、根気が続いているうちは何事にもとても熱心です。
その配下にいるのは、新しいことが苦手で「融通が利かない」部下ですが、このマネージャーは自分の好奇心にまかせて作業のしかたを事細かに指示します。あまりに細かい指示は一般的には嫌われがちですが、この部下にとっての細かい指示は、とりあえずやることが決められていて、先が見通せるので、逆に好ましいことだったようです。
しばらく経ってこのマネージャーの根気が続かなくなり、「後はよろしく」と言い出す頃になると、今度はこの部下の「融通が利かない」ところが長所になってきます。「決まったことを決められた通り、確実に遂行、継続する」という面が活きてくるのです。新たなやり方は確立していて、あとは細かい工夫をしながら、コンスタントに作業を続けるのが重要なので、「融通が利かない」のは都合が良いことです。「根気が続かない」マネージャーは、すでに手を引いていてほぼ口出しをしないので、この部下は自分のペースで仕事ができます。
ちょっと計算外の偶然ではありますが、ここでの教訓は「短所は長所の裏返しであること」と、「個人の特性をうまく組み合わせれば組織の機能は上がる」ということです。
お荷物扱いの社員の場合、どうしても排除の論理が先に立ちますが、その人の短所として見えていることは、使い方次第で長所になります。さらに、他の人との組み合わせ方によって、長所の比率が増します。
人材の組み合わせを工夫すると、その悩みは意外に解決できることがあります。
このコラムの執筆専門家
- 小笠原 隆夫
- (東京都 / 経営コンサルタント)
- ユニティ・サポート 代表
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