あけましておめでとうございます。
さて、昨年もいろいろな出来事がありましたが、その中でもオリンパス事件は、第三者委員会調査報告が出されて、ようやく全体像が見えてきました。
年末、青山学院大学大学院の町田教授が、週刊経営財務(No3046号)に、この調査報告書の記事を書いていました。
この中で、いくつか興味深い問題提起をしていたので、1-2回に渡り見ていきたいと思います。
今回は、会社の法令違反等(不正)の事実を発見した場合についてです。
あずさ監査法人は監査の過程で、ジャイラスの買収に際し、会社が法令違反している可能性について言及しています。
このように会社の不正が監査の過程で見つかった場合、3つの対応があります。
1つ目は、問題を徹底的に解明して、なんら問題のないという「無限定適正意見」をだすこと。
2つ目は、監査意見を表明するための十分な根拠を得られない場合、「意見不表明」とします。
3つ目は、全体として決算書はあっているが、一部問題点がある場合は、「限定付適正意見」を表明します。
しかし、町田教授が言うように、現在の監査実務の中では、限定付適正意見の表明や、意見不表明は行いづらいのです。
特に意見不表明の場合、会社は監理ポストになってしまいます。
そのため実務的には、無限定適正意見を出せるように会社を説得して会計処理を修正しています。
こうした無限定適正意見しか出せないような実務慣行の理由の一つに、監査報告書が短文式監査報告書となっていることに原因の一端があるような気がします。
現行の短文式監査報告書とは、監査の概要と結論だけを記載するもので、監査報告書は基本的に定型の文章を書いて、1ページで終わっています。
一方、長文式監査報告書、いわゆる通常のレポート形式であれば、いろいろと書くことができます。
現行のたった1ページだけの監査報告書では、記載内容もほとんど決められいて、なかなかいろいろなことは書けません。
監査報告書を書く時に、監査を振り返り、いろいろあったことを伝えたいと思ったことがありました。
ただ現実的には、監査報告書は、国際的に共通化されていますので、日本だけが長文式のレポートのように変更するということはできないでしょうし、そもそも守秘義務の問題もあり、いろいろと書くことは難しいでしょう。
しかし、もう少し監査法人から情報発信ができると、少しは違ってくる気がしますね。
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このコラムの執筆専門家

- 森 滋昭
- (東京都 / 公認会計士・税理士)
- 森公認会計士事務所 公認会計士・税理士
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監査・税務・ビジネス、”3つのキャリア”で、約20年。 その間、いつも「決算書の数字の奥にあるものをみる!」感覚を研ぎ澄ましてきました。 だから・・・ベンチャーから上場企業まで、あなたの会社の、一番の社外サポーターに!
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