組織作りやチーム作りの中で、「ムードメーカー」と呼ばれる人の存在は大切です。
例えば、かつて野球の米大リーグ、ブルージェイズでプレーしていた川崎宗則選手は、ベンチでも大きな声を出して雰囲気を盛り上げるなど、その明るい性格と真摯なプレーぶりで、チームに貢献する典型的な「ムードメーカー」といわれました。
また、よく言われる明るく元気な人でなくとも、例えば、ホテルのバーなどは、落ち着いた空間であることが重要ですから、お店にあった雰囲気を醸し出すということでは、そこで働く人たちも同じく「ムードメーカー」といえるでしょう。
これに対して、組織のムードを悪い方向に変えてしまうという人も、残念ながら存在します。「ムードメーカー」に対して、「ムードブレイカー」といっても良いでしょう。
仕事をしないマネージャー、文句ばかり言って行動しない後ろ向きの人、心配ばかりの悲観論者、ネガティブ発言ばかりの人、その他いろいろな人たちがいて、雰囲気の壊し方もいろいろです。
リーダーとして、こういう人に手を焼いた経験のある人は大勢いるでしょうし、中にはリーダー自身が「ムードブレイカー」になっている場合もあり、そうなると、その組織の立て直しはなかなか難しくなります。
私も今までいろいろなタイプの「ムードブレイカー」に出会ってきましたが、いろいろなタイプがいるとはいうものの、誰もが必ず言っていた決まり文句があります。
「この書類はそもそも必要があるの?」
「この研修はそもそも何のためにやるの?」
「そもそもなぜアイツがリーダーなの?」
「こんな仕事はそもそもやるべきじゃなかった」
など、とにかく「そもそも論」を出してくるのです。
原点に立ち戻る意味では必要な場合もあるので、つい正論のように思ってしまいがちですが、「そもそも論」は議論の矛先をすり替えただけで解決策がないので、問題解決につながることはありません。「そもそも論」はそれまで積み上げた議論をリセットし、建設的な解決策は示さず、提案者を批判したり攻撃したりしますから、その場の雰囲気は確実に悪くなります。
まさにムードを壊す決めゼリフのようなものですが、この「そもそも論」を言い出す人は、意外に多いと感じます。その人の問題発見力が優れているかのように錯覚されがちなので、社内で相応の立場にいる人や、評価が高いリーダーなどが、実はこの「そもそも論」の使い手だったりします。
「そもそも論」は、一見すれば的確な問題指摘のように見えますが、その大半はただ議論を混乱させて長引かせているだけです。
ついつい出てくる無意識の愚痴の場合もあるでしょうが、この発言が前向きなムードに水を差すことは間違いありません。
組織のムードを壊す「ムードブレイカー」の決まり文句である「そもそも論」を持ち出すことには、十分な注意が必要です。
このコラムの執筆専門家

- 小笠原 隆夫
- (東京都 / 経営コンサルタント)
- ユニティ・サポート 代表
組織に合ったモチベーション対策と現場力は、業績向上の鍵です。
組織が持っているムードは、社風、一体感など感覚的に表現されますが、その全ては人の気持ちに関わる事で、業績を左右する経営課題といえます。この視点から貴社の制度、採用、育成など人事の課題解決を専門的に支援し、強い組織作りと業績向上に貢献します。
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