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異動や業務の希望を聞くことに伴う責任

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社員にやる気を出させるヒントになるエピソード集 現場の事例・私の体験

 3月、4月という季節は、企業では異動が多い時期です。

 社員の配置や異動は、会社の権限で行うことが原則ですが、社員のやる気を促すためや、会社に対する満足感を高める一環として、本人の異動希望にこたえる制度を設けている会社があります。

 

 ローテーション制度やフリーエージェント制度などの呼び名がついているものや、自己申告制度の一部として話を聞いているもの、その他いろいろな形があります。

 中には、本人希望の実現性を高めるために、直属上司の関与を制限したり、一定年数の間に希望を実現しなければならないという縛りを設けたりというものもあります。

 

 本人が希望する部署、希望する仕事に就くことで、やる気を増して活性化するという効果は確かにありますから、こういう制度を設ける主旨としては理解できます。

 

 ただ、私自身はこんな経験をしたことがあります。

 特にローテーションを義務付けるような制度が導入されている会社ではありませんでしたが、自己申告や評価面談の機会には、本人のキャリアに関する話はすることになっていて、その人がどんな仕事にかかわりたいと思っているのかという情報収集は必ず行われることになっていました。

 

 そんなある日、まったく違う部署のある社員から、相談したいことがあるという連絡をもらいました。

 そこでの相談というのは、人事部門への異動希望という話です。

 その社員が言うには、「自分が就職活動で苦労した経験を、就活中の学生たちにアドバイスしたいので、新卒採用にかかわりたい」「だから人事部門に異動したい」とのことです。

 

 新卒採用の実務の中で、確かにその応募者との面接などの場面で、流れによっては就活のアドバイスめいた話をすることがあります。自社の活動とは関係ない話になってしまうこともあります。ただ、それは人事部門の“本業”ではありません。

 

 さらに言えば、人事部門の仕事は新卒採用だけではありません。職務範囲は会社によって違いますが、中途採用、研修運営、人事制度関連、労務対応、安全衛生、その他いろいろあります。会社のよっては給与計算や社会保険手続きを担当するところもあります。相談してきた本人がやりたいという仕事は確かに存在しますが、それは本当にごく一部で、優先順位が低い小さなことです。

 

 この時には、「あなたのやりたい仕事は確かに存在するが、あったとしてもごく一部である」ということと、「まず直属の上司とよく話し合わなければ、この話で人事部門が勝手に動くことはできない」ということを話しましたが、本人は納得できなかったようです。

 

 自分の部下や他の社員に異動希望を聞いたとき、実現できるか否かは別にして、「当分は今の部署で経験を積みたい」「○○部で××プロジェクトの仕事がしたい」「△△職から××職に変わりたい」など、ほとんどの場合はそれなりに妥当な答えが返ってきます。

 

 ただ、私が経験した例は、“本人が異動希望する先の仕事内容を理解できていない”ということです。そして、このような妥当性に欠ける異動希望であっても、希望を言わせておいてそれを受け入れないということは、本人にとっては不満しか残らないでしょう。不満を残さないためには、受け入れられない理由を本人に理解、納得させるしかありません。

 

 このように、異動を希望させるような制度は、仕組みを作るだけではなかなか機能せず、場合によっては逆効果となる場合があります。そうならないためには、結局はお互いのコミュニケーションを通じて意思疎通をしていくしかありません。

 

 この手の制度を活用して、実際に社内の活性化に成功した会社もあります。

 そのために必要なこととして、少なくとも“希望を聞く”ということは、その希望に対する説明責任と、実現可能性を担保する責任があるということは、心得ておかなければなりません。

 

 

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