「シニアの横柄」で企業が考えなければならないこと
-
これは、決してシニアを悪くいうつもりではなく、幅広い年齢層の人がお互いハッピーに働くために必要だと思ったことです。
ある会社のマネージャーですが、配下にいる50代後半の契約社員男性に手を焼いています。
この人が担当している業務はわりと定型的なものなので、よほどのトラブルでもなければ業務進捗だけをチェックしていればよく、マネージャーとしての日常的な指示は特に不要だそうです。
問題なのは月次の報告資料や申請書、精算書その他の提出書類など、会社所定の事務処理をなかなかやらないことだそうです。「こんなものは不要だ」「面倒だ」「別に精算してくれなくてもかまわない」など、いろいろな屁理屈を言ってくるそうです。
「そんな人は放っておけばよい」という考え方もありますが、会社のルールなのでそう簡単に割り切ることもできません。最終的には何とか書類を書かせますが、翌月にもまた同じことを繰り返します。
毎月のよけいなやり取りでマネージャーは憂鬱な気分になり、「そもそもなぜこの程度のことを嫌がるのかの理由がわからない」と言っています。私もそう思います。
この行動の理由を考えてみると、こういう態度を取ることでマネージャーにかまってほしいのかもしれませんし、年とともに事務処理がおっくうになってきて、本音でやりたくないと抵抗しているのかもしれません。いずれにしても、最近よく言われる「シニア特有の横柄な態度」との共通点を感じます。
この「シニアの横柄」というのは、老化現象の一つとして「理性が欠如していく」という脳そのものの問題があるそうです。年齢とともに理性をつかさどる前頭葉の機能が落ちて感情を制御しづらくなり、それまでは脳の機能(理性)で抑えていた、性格的にわがままな部分が表に出てきてしまうとのことです。
鉄道で暴れたり、店員に切れて暴言を吐いたり、ちょっとしたことも待てないといったシニアの行動は確かによく目にします。これからもどんどん高齢化が進んでいけば、こういう話はいつでも起こることです。そして、現役を続けるシニア層が増えてくるとすれば、企業としてもそれなりの付き合い方を考えていかなければなりません。
「シニアの横柄」への対応方法を調べてみると、「根気よく相手の求めていることをやっていくしかない」とありました。無用に感情を刺激せず、根気よくコミュニケーションをとっていくことだそうです。
しかし、これも日常生活の中であればまだ可能かもしれませんが、会社ではそこまで手をかける時間の余裕はありません。納得せずに怒っていたとしても、やるべきことはやってもらわなければなりません。
私が最近思うのは、企業がシニアに向き合うためには、今までより「性悪説」の発想を強めた仕組みづくりを考えなければならないということです。本人が納得したかどうかにかかわらず、あくまで組織のルールとして決められたことはやってもらうということです。マネージャーは「そもそも論」に答えることも、納得するまで説明することも不要です。また実際にこういった姿勢を取る企業も出始めています。
「性悪説」を取らずに済むならそれに越したことはありませんが、「シニアの横柄」が老化に伴って誰にでも起こりうることならば、それに見合った対応は必要になります。
これからシニア層が増えていく企業においては、特に考えていかなければなりません。
このコラムの執筆専門家
- 小笠原 隆夫
- (東京都 / 経営コンサルタント)
- ユニティ・サポート 代表
組織に合ったモチベーション対策と現場力は、業績向上の鍵です。
組織が持っているムードは、社風、一体感など感覚的に表現されますが、その全ては人の気持ちに関わる事で、業績を左右する経営課題といえます。この視点から貴社の制度、採用、育成など人事の課題解決を専門的に支援し、強い組織作りと業績向上に貢献します。
「社員にやる気を出させるヒントになるエピソード集」のコラム
「目指したい上司」がいる幸運といないことの当たり前(2024/03/06 14:03)
注意が必要と思う「生産性が低い」という指摘(2024/02/21 18:02)
「失敗」「挫折」の体験は成長に必須か?(2023/10/26 09:10)
問題は「閉鎖的な組織環境」でエスカレートする(2023/10/11 22:10)
「活躍したくない」というシニアや女性たちの気持ち(2023/09/27 18:09)
このコラムに関連するサービス
【無料】250名以下の企業限定:社員ヒアリングによる組織診断
中小法人限定で当事者には気づきづらい組織課題を社員ヒアリングで診断。自社の組織改善に活かして下さい。
- 料金
- 無料
組織の課題は、当事者しかわからない事とともに、当事者であるために気づきづらい事があります。これまでの組織コンサルティングで、様々な組織課題とその改善プロセスにかかわった経験から、貴社社員へのヒアリング調査によって組織課題を明らかにし、その原因分析や対策をアドバイスします。予算がない、依頼先を見つけられないなど、社外への依頼が難しい中小法人限定です。社員ヒアリングのみで行う簡易診断になります。
このコラムに類似したコラム
「活躍したくない」というシニアや女性たちの気持ち 小笠原 隆夫 - 経営コンサルタント(2023/09/27 18:35)
「自力でできること」と「どうしようもないこと」の区別 小笠原 隆夫 - 経営コンサルタント(2023/08/17 08:32)
「威圧するリーダー」のメリットは何か 小笠原 隆夫 - 経営コンサルタント(2023/05/10 18:18)
あるCEOが語った「若い社員への“違和感”」に対する”違和感” 小笠原 隆夫 - 経営コンサルタント(2023/03/01 22:03)
「キレる高齢男性」とコミュニケーション力 小笠原 隆夫 - 経営コンサルタント(2023/02/15 22:34)