ある時、仲間同士で話している中で、何人かが「仕事が面白いなどとは思えない」「むしろつまらない」「やりがいなんて感じない」といっていました。やはり仕事は生活のために仕方がなくやっているし、やらずに済むならやりたくないそうです。
私自身は最近そんなふうに思うことは、ほとんどなくなりました。仕事が最優先の人生ではありませんが、今の仕事はまあまあ面白いと思ってやっていますし、ただ生活のためと割り切っている感じではありません。やりがいとか社会的意義とか、多少はそんなことも感じています。
その話をしているうちに、ふといくつか、その人たちと自分との違いに気づきました。
会社員と自営業の違い、事業者と雇用者の違い、報酬の違いや労働条件の違いなど、一般的に見えることはありますが、そうではなく「仕事の大変さ」が大きく違うと感じたのです。どう見ても彼らの方が私より数倍大変な思いをしています。とにかく「無理をしすぎている」ように感じました。
その最たるものは、「無理な業績目標や業務上の目標」です。みんなそれに最優先で取り組み、達成してもしなくても、翌年はさらに無理な目標が降ってきます。そのために無理な働き方をしたり、無理な責任を背負ったりしています。他人に無理を押し付けたり、自分以外のせいにしたり、時には嘘や言い訳でごまかすこともあるようです。
それに対して私の場合、自分の甘さもありますが、仕事の結果が降りかかってくるのは自分だけなので、そんな無理な目標を設ける必要はありません。
請けた仕事は責任をもって全うすることは当然ですが、その時の状況によってできることとできないことは変わってきますから、与えられた環境の中でできる限りの100%になります。できないことはできないと言いますし、できるかわからないような仕事を無理してどうにかしようとはしません。かえって無責任になるからです。
無理をしている人たちは、常に誰かからムチを入れられている状態であり、私の場合はムチが入ることはあってもその機会は少なく、そもそもムチを入れるかどうかを決めるのは、ほとんどが自分自身です。
無理をしすぎている人たちは、それが自分の意志ではなく、そもそも余裕がありませんから「仕事が面白い」とか「やりがいがある」などと感じることができないのでしょう。
どんなことでも面白さややりがいを感じるためには、やはり心の余裕が必要です。
仕事のやりがいや面白さを、社員にどうやって見つけさせるかという取り組みが、人事上の課題として挙げられることがありますが、それができない要因に一つに「無理をしすぎている」ということがあります。
無理か無理でないかの線引きは、ほとんど個人の主観なので一律に決めるのは難しいです。ただ、やるかやらないかといった「仕事の割り切り」が自分自身の判断で可能ならば、「無理のしすぎ」はずいぶん少なくなるはずです。
仕事のやりがいや面白さを感じるためには心の余裕が必要であり、それを作り出すには、仕事であっても「無理なものは無理」という割り切りが必要ではないでしょうか。
このコラムの執筆専門家
- 小笠原 隆夫
- (東京都 / 経営コンサルタント)
- ユニティ・サポート 代表
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