リーダーのスタイルとして、最近注目されるのは「自分が先頭には立たない」「メンバーを信頼して任せる」「メンバーの自律、自主性を重んじる」といったタイプです。野球のWBCでの栗山監督などが、まさに当てはまります。
リーダーシップ・スタイルには、ありたい姿やゴールを示す「ビジョン型」、個々の成長を促す「コーチ型」、信頼関係が優先の「関係重視型」、チーム全体の合意のもとに進める「民主型」などがありますが、このいずれもメンバーとの対話や自主性を重視します。
この対極に位置するのが、指示命令によってメンバーをコントロールしようとする「専制型」「強制型」と言われるリーダーです。
最近は少なくなったように思いますが、こういうタイプのリーダーが組織のトップに居座っているケースは、まだまだ耳にすることがあります。「パワハラ」「老害」「(悪い意味での)ワンマン」などと批判されていることも多いですが、本人はほとんど気にしておらず、自信満々でいます。
威圧的、攻撃的な性格のことも多いですが、そんなリーダーが組織を率いることにメリットがあるかを考えてみると、私個人はあまり思いつくことがありません。
当然ですが、威圧と攻撃を受けるメンバーたちは、できるだけリーダーとの接触を避けようとします。リーダーに届く話は当たり障りのない情報、耳障りのいい情報に限られ、文句を言われそうなことは先回りしてつぶしたり隠ぺいしたりします。
組織運営のために必要な情報が正確にリーダーの耳に届きませんから、組織はまさにコミュニケーション不全に陥ります。そんな組織がうまくいくはずはありません。
組織で成果を出すことを考えれば、チーム内のコミュニケーションは最も重要な要素ですから、威圧して人を遠ざけるよりは、信頼関係のもとに何でも話し合える方が良いことは間違いありません。
リーダーとして結果を出したい、組織で成果を上げたいと考えれば、メンバーに対する「パワハラ」「威圧」「攻撃」は、最も避けるべき行動ということになります。
それでもなお、「威圧するリーダー」が存在するということは、組織の成果とは異なるところにメリットがあることになります。それはたぶんリーダー自身にとって「都合が良い」「気分が良い」ということです。
「みんなが言うことを聞く」「持ち上げてくれる」「プライドが満たされる」など、自分の権威欲を最優先に考えると、相手に対して威圧的に接するメリットが出てきます。
「パワハラ」「威圧」のリーダーほど、「これがチームのため」「厳しさが必要」などと言いますが、もし本気でそう思っているのであればそれは逆効果であり、そう言いながら自分のプライドを満たしているだけということが多いでしょう。
「威圧するリーダー」のメリットは、そのリーダー自身が気分よく、そして周りが言いなりで動くなど、自分にとっての都合良さしかありません。それはチームの成果にとっては良くない影響しかありません。
リーダーに欠陥のある組織は、やっぱりうまくいきません。
このコラムの執筆専門家
- 小笠原 隆夫
- (東京都 / 経営コンサルタント)
- ユニティ・サポート 代表
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