会社には、その組織ごとにいろんな色があります。“会社の色”というと、コーポレートカラーなど企業イメージを色で表現した、直接的な色彩そのものを指す場合もありますが、私のいう色とは、組織風土などと言われるもう少し感覚的な、会社の持っているオーラのようなものです。組織の改革とか改善というのは、ものすごく単純化して言えば、この色を変えるです。
色の変え方には、大きく二通りの方法があります。
一つは「色の塗り替え」で、建物で言えば建て替え、品物で言えば買い替えと同じようなことです。新しいものを取り入れ、「変わった」というインパクトを与え、一から「組織の色」を作り直すということです。
もう一つは「本来の色に戻す」ということです。“本来の色”とは経営理念、会社を設立した頃の想い、もともと持っている社風の強み、などです。土台を活かして新しいものを加えるということではリフォームかもしれませんし、オリジナルに戻すということでいえば、文化財の修復作業などに近いのかもしれません。“初心に帰る”ともいえるのかもしれません。
外部から入るコンサルタントの場合、程度の違いはありますが、どちらかというと、“色の塗り替え”を志向することが多いように思います。「変わった」というインパクトは強いですし、一見すると変化のスピードが速く見えるでしょう。スピード感を求めるのは今のご時世では当然ですし、外部人材は、基本的に短期成果が求められますから、それに見合った提案をしようとすると、どうしても“色の塗り替え”になってしまいます。
また、仕組みや制度といったハード面の研究に熱心なコンサルタントにとっては、“色の塗り替え”の方が新しい手法を実験したり、頭で考えていたことを試したりすることができるので、都合が良いでしょうし、「こうやったらこう変わった」と言いやすいので、自分たちの実績に取り上げやすいという事情もあるでしょう。
ただ、その結果として、回り道になったり逆効果だったりする例をたくさん見聞きします。「お金をかけて制度を作ったのに、結局使いこなせなかった」「納品されたドキュメントの山だけが残った」なんて話を今でもよく聞きます。
私の感覚では、まだ使えるものや残すべきものまで壊して作り変えようとすることが、結構あるように思います。組織改善には根気と継続が必要で、実際に取り組む経営者や社員の方々が納得していなければ、そのような取り組みはできませんが、“色を塗り替えてしまう”ことが納得を阻害し、根気と継続をジャマしていることが多々あるように感じます。かえってスピードを遅くしてしまっているように思います。
私は、どちらかといえば“塗り替える”のではなく、“本来の色に戻すためには・・・”ということを主眼に考えます。組織が元々持っているものを思い出す、取り戻すということです。
もちろん変えなければならないもの、壊さなければならないものもありますが、「組織が本来持っている“良い色”を引き出すためにはどうするか」を考えた方が、関係者の納得が得やすく、納得してからの浸透も早く、前向きに取り組んでもらえるので、組織改善を成し遂げるためには早道だと思っています。目先の時間が多少かかったように見えても・・・です。
“本来の色を失ってきていること” “色がくすんできていること”は、組織内ではなかなか自覚しづらいものですが、そんな状況を客観視するためのお手伝いをするのは、私のような立場の者のお役目の一つです。一方的に理論を振りかざしたり、理想を押し付けたりせず、役目をわきまえて、信頼関係を作るよう努力しながら、クライアントに貢献していきたいと思っています。
組織改善を考えるにあたって、「組織の本来の色を取り戻す」という切り口で考えると、また違う取り組み方が見えて来るのではないでしょうか。
このコラムの執筆専門家

- 小笠原 隆夫
- (東京都 / 経営コンサルタント)
- ユニティ・サポート 代表
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