今も見かける「残業がしたい社員」「長時間労働が苦でない社員」
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長時間労働、残業を是正する対策は、各企業で相変わらず続けられています。
かつては残業の申請制や一定時間以上の残業禁止といった取り組みばかりに偏り、さらに強制的な消灯や定時以降のシステム停止など、わりと強硬な施策が取られることもありました。
本来は業務量の調整や、作業効率化などと合わせておこなわなければならず、ただ時短ばかりに注目していると、ミスの横行や生産性低下、さらにサービス残業の温床になったり業績低下までつながってしまったりする懸念もあります。
最近ではようやくこのあたりを意識した取り組みも増えてきており、本当の意味での生産性向上が進められつつあると感じます。
長時間労働や残業に関することで、問題とされるケースの多くは、企業側に労務管理上の問題があり、長時間労働やサービス残業を会社が強いていたような構図であり、昨今の状況を見る限りでは、会社側の問題の方が大きいです。
ただ、最近はずいぶん減ってきたとは思うものの、残業削減に取り組んでいる中で出会う存在として、「残業がしたい社員」や「長時間労働が苦でない社員」は今もまだ見かけます。
なかなか思うように昇給しない昨今の環境からすれば、手っ取り早く収入を上げる方法は、残業して労働時間を増やすことですが、それを目的とした「残業がしたい社員」は、今でも一定数で存在します。
生活残業といわれるものは、誰にも多かれ少なかれあるでしょうが、残業代が生活給の一部と化していて、毎月の仕事量にかかわらず、コンスタントに残業する人がいます。
管理者からそのことを指摘されればその場では従いますが、許される最大の残業時間に何とかして合わせようとします。月30時間以上は申請制といわれれば、毎月29時間くらいに調整していたり、繁忙期で管理が緩められたりすれば、ここぞとばかりに残業に励みます。
また、「長時間労働が苦でない社員」も、コンスタントに残業しているという見え方は同じですが、仕事に時間を費やすことによる疲労や集中力の欠如という感覚が鈍いのか、とにかく仕事が効率的ではありません。
ただ、決してさぼっている訳ではなく、常に何かを忙しそうにしているので、上司からは指摘がしづらい状況があります。いかにも忙しそうに一生懸命仕事をしている部下に対して、「それは無駄だ」などというのは、よほど非効率な様子が具体的に見えなければ言いづらいでしょう。
会社と社員が「労働時間を減らそう」と同じ方向を向いていれば、業務分担の調整などの一般的なマネジメントの範囲で対応できますが、長い時間働きたいと思っている社員、働くことが当たり前になっている社員を、働かせないように管理するのはなかなか難しいことです。
労働時間の捉え方というのは、個人の働き方への意識から、それぞれの職業観もかかわってくるため、なかなか一筋縄ではいかないところがあります。
サービス残業も生活残業も、結局は働く時間数と賃金の関係が、密接過ぎることで起こる弊害なのかもしれません。
このコラムの執筆専門家
- 小笠原 隆夫
- (東京都 / 経営コンサルタント)
- ユニティ・サポート 代表
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