外国人労働者について書かれた、あるコラム記事が目に留まりました。
人口減少に伴い、これから働き手がどんどん不足してくることが問題となっている日本で、いま行われている主な対策は、女性やシニア活躍とIT活用です。
しかし、ある調査によれば、これらが相当にうまく進んだとしても、労働力減少を補うことはできないだろうとのことです。
ここから外国人労働者の受け入れと活用を考えなければならないという話が出てくるわけですが、島国ゆえの閉鎖的な感情もあるせいか、治安の悪化や社会規範が壊されるといった懸念などを理由に、これに強く反対する人たちがいます。
この記事によれば、スイスのビジネススクールである「国際経営開発研究所」が2016年におこなった調査では、日本の「働く国としての魅力」は、対象とした61カ国のうち52位という結果だったそうです。さらに別の団体である「日本国際化推進協会」の調査では、「日本で働くことが魅力的」と答えた外国人は2割しかいなかったとのことです。
この状況を見ると、仮に日本が外国人労働者を積極的に受け入れる決断をしたとしても、実際に来る人はあまりいないだろうと述べられています。ちなみに「日本で住むことが魅力的」との回答は8割を超えているそうで、国そのものへの魅力は感じてもらえているようです。
なぜ働きたくないのかという理由の一番は、やはり「長時間労働」ということです。他には「わかりづらい評価基準」「言葉の壁」「低賃金」といったことがあり、やはり労働時間と報酬の問題が大きいようです。
ここで思い出したのは、以前に海外赴任から戻った知人が話していたことで、それは「また日本で働くペースに戻れるだろうか」ということでした。同じような話は、他にも何人かの海外勤務経験者から聞いたことがあります。
赴任先の国によって多少違いはありますが、残業などはめったになく定時退社が当たり前、有給休暇はすべて消化し、なおかつ職住接近の環境で、通勤がほとんどなかったりします。だからといって生産性が低いわけではなく、それなりのビジネスとして成り立っています。
そんな環境が普通になっていると、日本人であっても「戻れるだろうか」と不安に思うわけで、これに言葉の壁や社会習慣の違いが降りかかる外国人となれば、さらに心配が大きいのは当然でしょう。
最近は多くの会社で長時間労働対策が進められ、相応の賃上げを検討している様子を見聞きします。ただその中で個人個人に話を聞くと、特に労働時間に関しては、長い時間働く習慣が身についた人ほど、「時間を減らして業績が下がっては本末転倒」など否定的な考えを持つ人が大勢います。
しかし、日本のような長時間労働は国際的には少数派であり、グローバル展開している企業では、「国籍問わず優秀な人材を確保するには、組織や労働環境をグローバル基準に合わせなければならない」として、様々な改革に取り組んでいます。海外と日本のギャップが減れば、海外赴任者や外国人労働者の不安や心配はなくなります。
こんなところを見ても、日本企業の国際的な競争力は低下しています。過去の成功体験を捨てて、今まで経験したことがない取り組みを進めなければならない時代になっていると思います。
このコラムの執筆専門家
- 小笠原 隆夫
- (東京都 / 経営コンサルタント)
- ユニティ・サポート 代表
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