サービス業を中心としたお正月営業は、働き方改革などの流れもあって、せめて三が日くらいは休もうというところも増え、以前に比べる少なくなってきているように感じます。そうは言っても元日から営業する大手スーパーなどもあり、利用者の利便性を取るのか、それとも従業員のプライベートを優先するのか、その対応は会社によって様々なようです。
これは数年前の新聞記事ですが、「元旦営業は是か非か」というものがありました。
記事によれば、その当時元旦から初売りをおこなうとしていた家電量販店は、
「年中無休で営業することでお客さまに安心を感じてもらえ、必要なものがいつでも購入できるメリットがある」
「元旦の買い物は日本最大のレジャーになっていて、こうした顧客の期待に応えることが個人消費にもプラスになると考えている」
「休みたい従業員は正月三が日は基本的に交代で休んでおり、希望を出せば元旦に休みを取れる」
「元旦に働いても構わないという従業員もいるし、手当を出したり通常より1~2時間早く閉店したりという配慮をしている」
などの考え方や対応方法を述べていました。
一方、ある研究機関によると、
「力を入れたいことについて調査すると『睡眠・休息』がトップであるなど、今の日本人は昔よりも忙しく疲れており、流通や小売り、外食業界も元旦ぐらいは休ませてあげてほしい」
「家計を支えるために共働きが増え、その結果、休日は外出せずに過ごす傾向が強まっている」
「疲れている人は買い物をネットで済ませる傾向が強く、セールや初売りに出向いて買い物をする人は減っている」
などの指摘をしています。
ある大手百貨店では、その当時は主要店舗で正月三が日は休業して4日からの営業にすることを検討するという話がありましたが、2023年の営業予定を見ると、多くは2日から初売りということのようで、正月休みを増やそうという方向が少し鈍っているように見えます。
私自身のお正月は、生まれてからずっと実家やどこか親戚の家に集まることが決まっていたので、正月営業のお店を利用した経験はほとんどありません。
ただ、両親が他界してからは集まる場所と理由がなくなってしまい、ここ最近はあまり予定がない正月になっています。
そうなるとやることもなく暇ですし、ちょっとどこかに買い物でも行こうかという気になるのはわかる気がします。正月営業のお店があれば、それなりに便利だろうと思いますが、その感じ方はそれぞれの家庭の事情でずいぶん違うのでしょう。
私が思うに、正月営業というのは、顧客ニーズや要望があったというよりも、消費喚起や売上アップなど、お店の事情から出てきたもののように感じます。潜在ニーズを掘り起こす一環ということですが、そこで働く人の負担は増しています。
これを顧客の立場から見れば、あれば便利だがなくても困らないという感覚で、利用する人は限られるように思います。このことはコンビニや飲食店の24時間営業、宅配便の細かな時間指定、当日着のネット通販なども同じで、深夜に活動する人や在宅時間が限られる忙しい人にとっては利用価値が高くても、そうでない人にとっては、これらのサービスを使う機会はそれほど多くありません。
「便利さ」や「安さ」の裏には、必ずそれを支える人がいます。そのサービスが過剰になるほど、裏で支える人の大変さは増すでしょう。
働く人のほとんどは、「便利さ」や「安さ」を享受する立場と、それを支える立場の両方を持っています。支える側の大変さを和らげるには、サービスを受ける側から歩み寄っていく必要があります。
医療や介護を支えている人など、そう簡単に休めない人がいるのも確かです。
ただ、過剰と思われるサービスは少し見直して、お正月くらいはみんなで休めばよいと私は思います。
このコラムの執筆専門家
- 小笠原 隆夫
- (東京都 / 経営コンサルタント)
- ユニティ・サポート 代表
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