「他人の残業」は無駄で「自分の残業」は必要?
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少し前の話になりますが、ある会社で「残業を減らすにはどうしたら良いか」というテーマで社員ヒアリングをしたことがあります。
実施した理由は、必ずしも解決方法を見つけたいというわけではなく、どちらかといえば社員が自身の課題として考えてもらい、そこから当事者意識を持つことで、それぞれの仕事ぶりが良い方向に変わればと考えたということです。
そのヒアリングの中でのことですが、「なぜ残業が減らないのか」という質問をして、その答えで最も多かったのは「みんな生活残業をしている」というものでした。
大して忙しくないのに、残業代が欲しいから仕事を引き延ばして残っている者が大勢いるといいます。人によっては「例えばアイツが・・・」などと個人名を挙げます。「休日出勤しているくせにのんびりくつろいでいる」「年中喫煙ルームに行っていて、仕事をしていない」などと、働いている様子への批判があります。
ただ、そういう人たちに自分自身が残業になる理由を尋ねると、ほぼ全員が「仕事量が多くて終わらないから」といいます。帰れるなら帰りたいが仕方ないそうです。中には「自分の仕事の進め方次第でもう少し改善できる」という人はいましたが、それは圧倒的に少数派でした。
つまり、「他人の残業は無駄が多くて非効率だ」と見ていて、その一方で「自分は精一杯の仕事をしていて、必要以上の残業はしていない」と思っているということです。他人を厳しく見ている割に、自分の働き方への問題意識はあまりありません。
このヒアリングで明らかになったのは、「残業が減らない理由の一端」です。自分の働き方は少なくとも人並み以上で、それなりに効率的に仕事をしていると思っている人が、今以上に働き方を工夫して時間を短縮しようなどとは思わないということです。予想以上に当事者意識はなかったということです。
この時におこなった対策はたいした工夫もなく、一方的に時間制限をしてその中で仕事が終わるようにマネジメントさせるというものでしたが、本来はもっと自律的な提案や活動を期待していたのに、それが難しい実態がわかってしまって、こんなやり方くらいしか実施できなかったということです。
残業では、確かに常習者のような人もいますし、時間数は人によってまちまちですが、そのほとんどの人は、「自分の仕事が非効率」とは思っていません。終業間際の作業指示も、エンドレスの会議も、それをやっている本人にとっては普通のことであり、仕事上必要なこととして疑問をは持っていません。
最近はあらかじめ決めた時間で強制的に消灯したり、退社させたりする施策を取る会社がありますが、こういう様子から見ると、それが現実的で有効な方法なのかもしれません。
このコラムの執筆専門家
- 小笠原 隆夫
- (東京都 / 経営コンサルタント)
- ユニティ・サポート 代表
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