実は私、「座右の銘は?」と聞かれても挙げられる言葉がなく、「尊敬する人は?」と聞かれても挙げられる人がいません。
これはすべての拠りどころにしているような言葉は持っていない、全人格的に尊敬しているような人はいないというだけであって、「気に入ったフレーズの言葉」というのはいくつかありますし、「尊敬できるところがある人」にはたくさん出会っています。自分なりに「こうありたい」という理想として、影響を受けたような人もいます。
そんな私が今までお会いしたことがある方で、結構な有名企業の社長様の何人かから、同じような印象を受けたことがあります。それは、相手が年上だろうと年下だろうと、誰にでも同じ接し方をされ、謙虚でいばらないという姿勢です。
どんなに知り合いであっても、基本的には敬語でお話をされ、自社の新入社員でも、「さん付け」で呼んでいます。いろいろな人がいる公の場だからという意識もあるのかもしれません。
これを他人行儀、フレンドリーじゃない、などという人がいるかもしれませんが、ご本人がお持ちの雰囲気や表情で、そんなことをまったく感じさせません。
いつも相手からの話をよく聞き、自分の考えも話しますが、それを押し付けるような言い方はしません。自分の話ばかりを一方的にすることもないし、聞かれていないのにああすべきこうすべきというような、説教じみたことも言いません。
威圧感がなく、温和で穏やかですが、自分から周囲の人たちにどんどん声をかけ、その場での存在感は絶大です。
人間というのは、どこかで他人に認めて欲しいし、注目もされたいし、褒められもしたいものです。私自身も謙虚な聞き上手でいたいと思っていますが、気づけばそうなっていないこともたくさんあります。ついつい自分の自慢や一方的な考えを話していることがあります。
この社長様たちも、もっと深く付き合っていけば、もしかしたらそういう面もあるのかもしれません。経営者というのは、ただでさえ「俺が俺が」となりがちな人も多いですから、むしろそちらの方が当たり前でしょう。
ただこの方々を見ている限り、本当に自然体でそういう面がまったく感じられず、またそういう雰囲気を醸し出さないというレベルが、私が今まで見てきたもの、経験してきた感覚とはまったく違っていました。
この様子を見ていて、実はこんなところこそが、本物のリーダーに必要な素養なのかもしれないと感じました。
経営者、社長、リーダーというと、概して主張が強く、強引さも持ちながら、周りを巻き込んでぐいぐい引っ張っていく、先頭に立って走る、俺について来いというタイプを想像しがちですが、そんなスタイルだけがリーダーシップではありません。
この社長様たちは、ご自分の人格、振る舞いによって周りの人たちから得る尊敬と信頼をもとにしたリーダーシップではないかと思います。そうやって周りの人を巻き込み、協力者を増やし、やる気を与えていくことで、いろいろなビジネスを成功させているのだと思います。
たぶん誰にでもできることではありませんが、こういう素養や一人の人間としての態度には憧れを持ちますし、私もできることなら少しでも近づきたいと思います。
まずはそういう心構えを持つことと、行動を真似することから始めていければと思っています。
このコラムの執筆専門家
- 小笠原 隆夫
- (東京都 / 経営コンサルタント)
- ユニティ・サポート 代表
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