「老害」と「長老」の違いはどこにある？

　いろいろな企業や組織の中で、「老害」という話を聞くことがあります。

　「老害」を辞書で調べると、

・企業や政治の指導者などで、中心人物が高齢化しても実権を握りつづけ、若返りが行われていない状態。

・能力の衰えた高齢者が社会や組織の中で活動の阻害をする際に使われる。

などと書かれています。

　「老害」と言われがちな要素には、考えが古い、頑固、威張る、偉ぶる、その他いろいろあると思いますが、一言でいえば、“扱いに困る年長者”となるのでしょう。

　もう一つ、年長者に対する言葉に、「長老」というものがあります。

　こちらの意味は、

・年老いた人をうやまっていう。

・特に経験が豊かで、その社会で指導的立場にある人。

とあります。

　指導者やご意見番として、経験豊富で物知りな“一目置かれる存在”ということだと思います。

　同じような指導的立場にいる年長者が、かたや「老害」と言われて煙たがられ、かたや「長老」と言われて、様々な場面で意見や判断を求められます。

　この違いがどこにあるのかを私なりに考えてみましたが、その答えは、

・今でも相応の能力を持っているか否か

・年下から認められ、愛されているか否か

という二つだけのことでした。

　まず、「相応の能力」ですが、これは人としての“総合力”という意味です。年令を重ねるほどに、体力や記憶力は落ち、目や耳といった体の機能も低下していきますが、一方で様々な経験は増えていきます。そのすべてをまとめたものである“総合力”は、どんなに年をとっても向上させることができます。

　ここで「老害」と言われてしまう人は、昔の知識に安住して新たに学習をしない人、学習をする必要がないと思っている人であり、一方「長老」と言われる人は、古い知識だけでは通用しないことを理解し、新しい知識や物事を学習し続けている人だといえます。

　もう一つの「年下に認められ、愛される」ということですが、これは能力的に認められることと合わせて、 自己中心的な振る舞いをしたり、一方的に決めつけたり、自らの非を認めなかったりということをせず、周囲から人柄が認められ、愛されているということです。

　「老害」の場合は、過去に実績があったとしても現在では認められていない人や、特に年下の人から嫌われるような態度、言動が見受けられる人であり、「長老」の場合は、今の能力が認められていて、人としても愛される行動、態度ができる人でしょう。

　こうやって考えると、たいして年を取っていなくても「老害」と同じ行動の人はいますし、周りをうまくサポートしている「長老」的な人もいます。

　頑固さやわがままさは、年を取るにつれて加速すると言いますが、きっとそれは、その人がもともと持っていた本性が現れてきたのだと思います。

　ですから「老害」と「長老」の違いは、初めは些細なものであっても、年令を重ねるほどに違いが大きくなっていくように感じます。

　私の年代では、「老害」もしくは「長老」と言われるのは、もう少し先のことだと思いますが、今から少しでも、「長老」と呼んでもらえるような習慣づけが必要です。

　まずは新しいものに興味を持ち続け、人に対する謙虚さだけは失わないようにすることでしょう。