飛び越してもよい「情報収集」と飛び越してはならない「指示命令」
-
組織上のどんな立場でも、現場で起こっていることの「情報収集」は大事です。
社長や役員の現場視察や現場ヒアリングはいろいろな企業で行われていますし、直属の上司部下の関係だけでなく、それを飛び越えた意見交換や情報交換、懇親といったことも、仕組みの有無にかかわらず実施されていると思います。こんな「情報収集」に関しては、それが組織の枠や直属の関係を越えていたとしても、悪いことではありません。
ただ、特に中小企業やオーナー企業で多いのは、この「情報収集」の結果をもとに、組織の枠や上司部下の関係を飛び越した「指示命令」が行われてしまう場合があります。社長や役員が、直属の部課長を飛び越して現場の一般社員に直接指示を出し、部課長はそれを知らない、などということです。
役員が部長を飛び越す、部長が課長を飛び越すなど、パターンはいろいろありますが、これは組織運営上まずいことです。
きちんと説明すれば、「それは組織運営上よくないことだ」と理解してもらえますが、実際に組織を飛び越した「指示命令」は、結構な頻度で行われていて、それにもかかわらず、当事者がそれを自覚していることは意外に少ないです。
「自分は現場を知っている」という感覚で、組織階層はあまり考えず「自分で指示してしまう」のです。
しかしこれは、飛び越された指示命令の権限者にとっては、大変困ることです。自分の指示が覆されたり、つじつまが合わなくなっていたり、それが自分の預かり知らないところで行われていたりします。
飛び越された管理者はどう行動するかを考えれば、まずは飛び越した指示を出した上席者に反論するか、黙って従うかのいずれかしかありません。
その後は、飛び越された本人が、「責任感をなくす」「自分で判断しようとしなくなる」「上司に不信感を持つ」「やる気を無くす」など、いずれにしてもプラスに働くことは一つもありません。
組織上の権限を持ったオーナー経営者や役員だと、ついつい口を出したくなるのでしょうが、組織上の秩序を守るには「指示命令」を飛び越して行うことは、よほどの緊急時でもない限り厳禁です。
「情報収集」は幅広く臨機応変に行い、「指示命令」は組織上の職務権限に従うということは、企業規模に関わらず守らなければならない原則だと思います。
このコラムの執筆専門家

- 小笠原 隆夫
- (東京都 / 経営コンサルタント)
- ユニティ・サポート 代表
組織に合ったモチベーション対策と現場力は、業績向上の鍵です。
組織が持っているムードは、社風、一体感など感覚的に表現されますが、その全ては人の気持ちに関わる事で、業績を左右する経営課題といえます。この視点から貴社の制度、採用、育成など人事の課題解決を専門的に支援し、強い組織作りと業績向上に貢献します。
「社員にやる気を出させるヒントになるエピソード集」のコラム
いろいろ大げさにし過ぎて避けられる部長の話(2021/01/26 07:01)
注意が必要な「弱い人」にだけ「強い人」(2021/01/19 07:01)
「栄転」と「左遷」を区別する意味はあるか(2020/12/22 07:12)
ちょっとの仕掛けで良くも悪くもなる職場環境(2020/12/15 07:12)
初対面のアポをドタキャンした会社に未来はあるか?(2020/12/08 07:12)
このコラムに関連するサービス
【無料】250名以下の企業限定:社員ヒアリングによる組織診断
中小法人限定で当事者には気づきづらい組織課題を社員ヒアリングで診断。自社の組織改善に活かして下さい。
- 料金
- 無料
組織の課題は、当事者しかわからない事とともに、当事者であるために気づきづらい事があります。これまでの組織コンサルティングで、様々な組織課題とその改善プロセスにかかわった経験から、貴社社員へのヒアリング調査によって組織課題を明らかにし、その原因分析や対策をアドバイスします。予算がない、依頼先を見つけられないなど、社外への依頼が難しい中小法人限定です。社員ヒアリングのみで行う簡易診断になります。

このコラムに類似したコラム
「働かないアリ」は組織存続に必要という話から 小笠原 隆夫 - 経営コンサルタント(2020/05/12 08:00)
管理部門が過剰な会社と軽視する会社 小笠原 隆夫 - 経営コンサルタント(2019/04/23 08:00)
「適切な現場介入」を線引きする難しさ 小笠原 隆夫 - 経営コンサルタント(2019/02/19 08:00)
現代の「上下関係」は“命令と服従”でなく“相手への敬意”という話 小笠原 隆夫 - 経営コンサルタント(2017/04/11 08:00)
アメリカ企業は「機能体」、日本企業は「共同体」という話で思ったこと 小笠原 隆夫 - 経営コンサルタント(2016/08/30 08:00)