小笠原 隆夫
オガサワラ タカオ長寿企業数が世界一の日本
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つい先日お聞きしたセミナーのテーマが、「100年続く強い企業にするためには」というものでした。
日本には、創業200年を超えるような長寿企業が3千数百社あるそうです。これは、世界中の長寿企業の4割を占めるそうで、千年を超える企業も7社とかあるそうです。ちなみに2位のドイツでは千数百社ということでしたので、日本がいかに突出しているかがわかります。
また、そのほとんどが従業員300人未満の中小企業であり、多くが家族経営のような企業だそうです。
日本に長寿企業が多い理由について、いろいろな方が述べられている内容を調べてみましたが、出てきたものは以下のようなことでした。
・本業重視(多角経営が少ない)
・信頼経営(長い歳月をかけて勝ち取った信頼を財産として、企業リスクに対抗している)
・目先の利益を追わず、細く長く経営するという理念を持つ(過度な成長、過度なパワーを望まない)
・徹底した職人気質(現場を大切にする)
・血縁を越えた後継者選び(婿養子などで財産の分散を抑え、血縁関係がなくても後を継げるようにする。)
・保守的な企業運用
・顧客や地域を重視し、「社会の公器」という志を持っている。
・危機への創造的な適応(守るものは守り、変えるものは大胆に変える)
・品質への限りないこだわり
・後継者の育成への注力
・「終身雇用制」と「年功序列制」
どれもそれなりに納得できることですが、共通するのは「ちょっと前の日本的企業」という気がしました。
そう考えれば、最近の日本企業の弱体化は、グローバル化という大きな流れの中で、本来は持ち続けるべきだった強みを捨ててしまったためというような感じがします。
今回のセミナーでうかがったお話の中で、最も印象に残った「100年続いている企業の共通点」というのは、以下のようなものでした。
・創業者の理念を脈々と伝えている
仰々しい言葉で語られた理念などではなく、例えばおいしいものを食べさせたい、世の中を便利にしたい、といったような、誰が見てもわかる簡単な言葉や言い方で伝えられていて、創業者の思いが今でも明確なメッセージとして活きている。
・次の世代にどうやって引き継ぐかを常に考えている(100年先を見て経営している)
老舗の味とか、昔ながらの製法とか、職人の技術とか、絶対守るべきものは守り通す一方、IT化だったり、話題の場所への進出だったり、技術を活かした新商品だったり、新しいことへの感度が高く、いかに時代に合った経営をしていくかを常に考えている。
私も言葉の大切さというのはいつも意識していますが、経営理念となると、どうもカッコよくしたいとか思ってしまうのか、独りよがりのこだわりに陥ってしまうのか、さんざん考えた挙句に、ありがちなきれいな言葉になってしまって、いまいち他の人の心には響かなくなってしまっているように感じます。
また、何を守って何を変えていくかの判断は、本当の究極の課題だと思いますが、リストラやコストカットなど、少し短期的な視点に偏り過ぎ、結果的に力を失ってしまっている気がします。
今回うかがったお話で、伝えたい思いは「ストレートな言葉で表現する」こと、そして出来るだけ遠くを見て判断することの大切さを改めて感じているところです。
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