社員旅行を行っている会社は、ずいぶん少なくなったといいます。一方で、社員同士のつながりが希薄になりがちな昨今では、その意義が見直されて復活しているような話も聞きます。
一般的な話では、「なんで毎日一緒に仕事をしている人と旅行をしなければならないのか」「仕事を離れてまで会社の人と付き合いたくない」「旅行くらいは気の合う仲間と行きたい」「オジサンたちとの宴会旅行はイヤ」など、特に若手社員は否定的な考えの人が多いと聞きます。私が思うに、たぶん昔であっても行きたくないと思っていた人はたくさんいて、でもそんなこと言えないし、会社のしきたりだからとイヤイヤでも参加していたのではないでしょうか。今は若手社員であっても、「イヤなものはイヤ」とはっきり言うようになっただけのように思います。
私自身は、社員旅行は意外に好きで良く参加していた方ですが、それでも新入社員で初めて行く時はあまり気乗りしていなかった記憶があります。当時の私の社員旅行イメージは、典型的なオッサンの宴会旅行でしたから、今の若手社員と同じく、「そんなもん楽しいはずがない」と思っていました。もし社員旅行についての意見を求められれば、たぶん否定的な事を言っていたに違いありません。
でも実際に行ってみると何のことは無く、社長も上司も先輩もその他仲間も日頃と違ってリラックスしていて、別に絡まれるわけでもいじめられるわけでもなく、いろんな人の仕事と違う面が見えたり、あまり知らなかった人との親交が深まったり、旅行をきっかけにした共通の話題ができたりして、参加して良かったなぁという感じでした。初めはイヤイヤだったけど、行ってみたら意外に楽しかったという、まぁ良くあるパターンです。そう思うと、最近のように若手社員に不評だからやめようなどと、初めからその場が無いというのは、なんだかもったいない気がします。
つい先日、もうすぐ79歳になる私の母が、あまり面識がない人たちと一緒に食事をしなければならないような話になり、「この年になって初対面の人に会って挨拶するのは苦痛だ、嫌だ」と散々言っていたのですが、いざ会ってみると共通の話題もあったらしく、「いい人たちで良かった」と言っていたことがありました。
私のその時「二度と会いたくないほどイヤな人に出会う事は稀だし、面倒と思ってもとりあえず会ってみればいいこともあるんじゃない?」と言ったことがあります。
世代や立場が違う人、初対面の人との交流は、確かに面倒な感じがします。でもそれをそのまま避けてしまうよりは、とりあえず会ってみる方が良いことが多い気がします。会ってみた結果が「あのオッサン、やっぱりイヤな奴だったなぁ」であっても、自分の引き出しとしては増えるはずです。
もしも社員旅行のような行事があるならば、あまり毛嫌いせずにとりあえず参加してみると、意外に面白い発見があるのではないかと思います。
このコラムの執筆専門家
- 小笠原 隆夫
- (東京都 / 経営コンサルタント)
- ユニティ・サポート 代表
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