ある人に「サラリーマンは雇われている立場なんだから、会社から強制されても受け入れるのが当然だ」と言われたことがあります。
もちろんそういう側面はあると思いますが、私はその人にはあまり同意できませんでした。なぜかというと、その人が管理者(部長職)の方で、どうも自分の部下から納得を得るということを面倒と考えていて、それを避けるための口実として言っているように感じたからです。
確かに部下が自分の指示に逆らわず、何でもハイハイと聞いていたら、管理者にとってその場はラクかも知れません。でも、自分の意見表明もせず、言われた通りにしか動かない人材が、会社にとって有用な訳がありません。
納得を得られないまでも指示した背景や周辺状況を説明し、意見を聞き、その意見の内容によっては取り入れるというような手順を省いてしまったら、仕事結果の優劣に跳ね返って業績そのものにマイナスに働くことは言うまでもなく、部下はやる気を失っていき、場合によっては辞めていってしまうかもしれません。それも自分で仕事の構想ができる力を持った、有能な人達からです。
自分が部下でいた頃は、何でも知らせて欲しい、情報共有したい、納得できるようにしたいと考えていたはずなのに、管理職になるといつの間にか、部下を納得させることを避けるようになってしまう人は、案外多いのかもしれません。意見のぶつかり合いを避けたい心情はわからなくはないですが、それでは管理者の役割として最も重要な部分、部下のモチベートと信頼関係作りを放棄していることになってしまうと思います。
最近、「うちは受身の人材が多くて困る」などと言う会社は多いですが、実は自分たち自身の振る舞いで、そのように仕向けているのかもしれません。
このコラムの執筆専門家

- 小笠原 隆夫
- (東京都 / 経営コンサルタント)
- ユニティ・サポート 代表
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