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いなくなってわかる「その人材」の大切さ

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社員にやる気を出させるヒントになるエピソード集 現場の事例・私の体験

 ある金属部品の加工メーカーで、熟練の職人Aさんは、雇用延長を重ねてもうすぐ70歳になる人ですが、さすがに体力的にもつらくなってきたとのことで、いよいよ退職するそうです。

 会社は時短勤務などでさらに延長を打診しましたが、本人は「キリがなくなってしまうから」と固辞したそうです。

 

 工場長を始め、特に若い職人たちから一目置かれている人ですが、決して面倒見が良いわけではなく、どちらかといえば無愛想で、少しとっつきづらい雰囲気の、いかにも職人らしい人です。

 管理職経験もなく、リーダーシップを取ることもなく、特に高い評価をされたこともない、目に見える実績では「大勢の中の一人」と見られるような人です。

 

 Aさんが退職して間もなく、製品の品質トラブルがありました。原因を突き詰めていくと、ちょっとした確認事項の漏れがあったそうですが、今までこのあたりをアドバイスしていたのが、実は退職したAさんだったそうです。

 Aさんがいた頃は、「この製品はここに注意が必要」「この部分だけは確認した方が良い」、「こういう加工の仕方をすればやりやすい」「こんな処理をすれば加工できる」など、経験に基づく細かなアドバイスをしていたそうです。

 自分から積極的に声をかけるわけでも、体系的に教えてくれるわけでもありませんでしたが、勘所を押さえた細かなアドバイスが、全社の品質に大きく貢献していたのです。

 

 だからこそ現場の社員たちから一目置かれ、みんながアドバイスを求めにいく理由だったようですが、本人の成果としては目に見えづらいもので、さらに本人の控えめな性格もあって、会社は実態をあまり認識できていませんでした。

 「いなくなって初めて価値がわかる」という典型だったようです。

 

 最近は多くの業種で人手不足が言われていますが、企業によって業績状況などは様々で、事情によっては人員削減を行っているところがあります。

 こういう人員削減の時、意識されるのは削減する人数の問題です。どの部署、どの職種、どの年齢層で何人減らすかということですが、人件費で見た価値は同じであっても、どこの誰が対象になるかによって、現場の状況は大きく変わります。「人材」という経営資源には、費用だけでは把握できない価値の違いがあります。

 多くの企業で起こっていることですが、「一人ぐらい辞めても大丈夫」「彼がいなくても現場は回る」「辞めたら採用すればよい」など、人材を「駒」のようにとらえて、その入れ替わりを問題視しないことがあります。

 ただ、人材というのは単にスキルだけではなく、意欲や帰属意識などの心理的な側面が伴って、初めて価値がある経営資源になります。

 他の経営資源とは異なり、「人材」には心があります。人材に関して目に見える数字上だけのとらえ方をしていると、思った以上の問題が起こることがあります。

 

 「その人材」が、いなくなって初めてわかること、それが思いのほか大きな価値であったということは、特に現場レベルの仕事ではよく見かけます。見えづらい影響をよく認識した上での意思決定が必要です。

 

 

 

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