「情報共有」に自信を持つ社長のちょっとずれた感覚 - 人事労務・組織全般 - 専門家プロファイル

ユニティ・サポート 代表
東京都
経営コンサルタント
03-4590-2921
※お電話の際は「"プロファイル"を見た」とお伝え下さい。

注目の専門家コラムランキングRSS

対象:人事労務・組織

専門家の皆様へ 専門家プロファイルでは、さまざまなジャンルの専門家を募集しています。
出展をご検討の方はお気軽にご請求ください。

「情報共有」に自信を持つ社長のちょっとずれた感覚

- good

  1. 法人・ビジネス
  2. 人事労務・組織
  3. 人事労務・組織全般
社員にやる気を出させるヒントになるエピソード集 現場の事例・私の体験

 私は会社全体での情報共有、認識共有は、業績向上のために重要な要素の一つだと思っています。

 そんな話をしたとき、賛同してくれる社長とそうでない社長がいますが、あまり肯定的ではない社長がよく言うのは、「情報を伝えてもどうせ理解できない」ということです。

 

 そんな時に私は、「情報を出さなければ理解者はゼロだが、出せば少数でも理解できる人がいるかもしれない」と言います。情報共有、認識共有のためには、まず伝える努力をしなければ何も始まりません。

 

 そういう中で、ある会社の社長と社内の情報共有に関する話をしていた時、この社長は、「うちの会社はどんな情報も隠さずに社員に公開している」と自信満々におっしゃって胸を張ります。ただ、一見したイメージでは、そんなタイプの人には見えなかったので、もう少し細かく話を聞いてみました。

 

 その話の中で、公開していると言ったのは、期末の財務諸表のB/SとP/L、あとは月次の売上と利益の集計値という資料で、それもエクセルシートにただ数字が並んでいるようなものでした。

 この資料に対する社員からの問い合わせは、未だかつて一度もないそうで、これをベースにした議論もしたことは無いようです。

 

 社員が資料の内容を理解しているとは言い難い状況と思われますが、社長がおっしゃるには、「これだけの情報を見せているのだから、理解できない方が問題」「これくらいのことは読み取れるように勉強することが当然」とのことです。

 

 この発言に見られるように、社長は社員たちが自分と同等のレベルで会社状況を理解している前提で振る舞うようですが、社員たちの意識は当然そこまでついてきていません。それに対して社長は、「うちの社員は意識が低い」「理解力が足りない」と言い、ご自身の発想に基づく施策を、わりと一方的に打ち出します。

 社員たちは、さらにそこについていけないという悪循環になっていますが、社長自身はこの状況への対策が必要という意識はありません。

 

 確かにこの社長の言う通り、公開している情報を読み取る力が社員には足りないという言い分はわかります。ただ、ここでの一番の問題は、社長自身が持っている様々な会社情報を、結局は「伝えようとしていない」ということにあります。結果的には会社全体での情報共有、認識共有にはつながっていません。

 

 決算時の財務諸表では、様々な会計上の調整もされるので、仮に読み取り方を勉強していたとしても、実態を知るには、その内容を突っ込んで聞かなければわからない部分がありますし、解説も無いままでただ数字が並んだエクセル帳票を見せられても、特に一般社員などはまったく意味が分からないだろうと思います。

 

 この会社での情報発信と共有の中心を担っているのは社長ですが、「伝えようとしていない」という情報開示では、実施する意味はほとんどありません。

 

 これは極端な例かもしれませんが、情報や認識の共有を考える時、「伝えたか」よりも「伝わったか」ということが最も重要です。その結果は結局業績として経営者にはね返ってきます。

 

 「しっかり伝わったのか」という相手目線の意識が大切だと思います。

 

カテゴリ このコラムの執筆専門家

(東京都 / 経営コンサルタント)
ユニティ・サポート 代表

組織に合ったモチベーション対策と現場力は、業績向上の鍵です。

組織が持っているムードは、社風、一体感など感覚的に表現されますが、その全ては人の気持ちに関わる事で、業績を左右する経営課題といえます。この視点から貴社の制度、採用、育成など人事の課題解決を専門的に支援し、強い組織作りと業績向上に貢献します。

03-4590-2921
※お電話の際は「"プロファイル"を見た」とお伝え下さい。

カテゴリ 「社員にやる気を出させるヒントになるエピソード集」のコラム

カテゴリ このコラムに関連するサービス

対面相談 【対面】「活気がない」「やる気が出ない」職場活性化を考える

当事者では気づきづらい組織風土の問題をアドバイス。同テーマ商品の対面相談版です。

料金
6,000円

「今一つ元気がない」「何となく一体感がない」など、職場の風土や雰囲気に関する悩みについては、当事者しかわからない事情とともに、当事者であるために気づきづらい事もあります。これまでのコンサルティングで、活気を維持する、活気を失う、活気を取り戻す、という様々な事例、プロセスを見た経験から、会社状況に合わせた原因分析、対策をアドバイスします。(同テーマのメール相談を、より詳細に行うための対面相談です)

【対面】「活気がない」「やる気が出ない」職場活性化を考える

このコラムに類似したコラム

「どうせ言ってもわからない」は結局損をする 小笠原 隆夫 - 経営コンサルタント(2019/06/18 08:00)

「しつこい電話営業」で想像してしまった社内事情 小笠原 隆夫 - 経営コンサルタント(2014/09/02 08:00)

いつもいてくれないと困る? 小笠原 隆夫 - 経営コンサルタント(2014/07/15 08:00)