「自分の食いぶちくらい自分で稼げ!」というハッパのかけ方をする社長さんや管理職っていますよね。すこぶる正論だとは思うのですが、もし私が社員としてこう言われたとしたら、たぶん確実に言い返したと思います。「だったら独立して自分でやりますよ!」って・・・。
会社に入る、組織に属するということは、自己判断や自分の裁量の一定部分、要は自立心の一部を会社に提供するのと引き換えに、一定の生活安定や報酬を得るということです。だから仕事があってもなくても決まった時間に出社しなければならないし、仕事時間中に自分勝手に抜け出してはいけないし、会社、組織、上司の指示に基づいて働かなければなりません。あまり良い言い方ではありませんが、「自分の食いぶちを稼ぎきれなくても、他の誰かに稼いでもらう」というリスクヘッジのための会社勤めということがあるでしょう。
もちろん組織に属することで得られる、自分にとって都合の良いこともたくさんあります。「自分だけでは作れない仕事環境を用意してもらえる」「会社の看板やブランド、人脈が使える」「会社に蓄積されたノウハウが使える」「会社が予算を用意してくれる」など、会社にいるおかげで自分の仕事が成り立つという面があります。「会社にいれば自分の食いぶちは稼げるが、自分一人だけではそう簡単には稼げない」ということです。
私が考える会社と社員の関係というのは「お互い様」の関係だと思っています。会社は社員がいるから稼げるわけだし、社員だって会社があるから仕事ができるわけだし、それぞれの立場で、組織のおかげで一人ではできない大きなビジネスができます。
経営者や管理職の「自分の食いぶちくらい自分で稼げ!」という言い方は、他人に頼りすぎないという心構えとしてはアリですが、これを本気で社員に要求しているとしたら、組織に属していること自体を否定しているように聞こえてしまいます。会社は社員を“雇ってやっている立場”で、社員はそれに報いるために“働かなければならない立場”という主従関係の考え方です。「お互い様」ではありません。
最近は“ブラック企業”など、「お互い様」の精神ではない企業が増えているようです。でも会社と社員の「お互い様」の関係を軽く見ていると、いつか大きなしっぺ返しが来るように思います。
このコラムの執筆専門家
- 小笠原 隆夫
- (東京都 / 経営コンサルタント)
- ユニティ・サポート 代表
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