小笠原 隆夫
オガサワラ タカオ現代の「上下関係」は“命令と服従”でなく“相手への敬意”という話
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最近の体育会系の「上下関係」について書かれた記事を目にしました。
ご自身も高校、大学で野球部に在籍され、ドラフト候補投手のボールを受ける活動をされていて、野球に関するいろいろな著作をお持ちの安倍昌彦さんという方のコラムです。
記事によると、箱根駅伝の優勝シーンや、大学野球や高校野球の「名門校」と言われるような学校での練習風景など、それらのどんな場面でも、最近パッと見ただけでは誰が“上級生”がわからなくなっているそうです。
選手全員がほどよい緊張感の中で、同じように準備を行い、同じようにノビノビと練習している様子は、以前のように“上級生”が遠目にもすぐわかり、指導者や上級生の“支配感” “威圧感”の中で練習が進行していた頃とは全く違っているとのことです。
当時は時代の要請として、支配、威圧、精神力といったことに基づく上下関係を機能させることが、管理する上で最も都合が良かったが、上級生をごく自然にニックネームで呼んだりする最近の人間関係では、下が上をからかうような嫌悪感はなく、お互いの間にある「敬意」に基づく絆を感じたとのことでした。
「上下関係」というと、往々にして“命令と服従”をベースにした人間関係を指しますが、人と人が世代を越えてつながっていればそれは上下関係であり、それが“敬意”に基づくものであってもよいということだと記されていました。
これはつい先日、私自身が経験したことですが、たぶん私よりは10歳以上年上と思われる、私の素性を知らないほぼ初対面の方から、ああだこうだとお説教じみた話をされたことがありました。
その内容は私の専門分野に関わることでしたが、話している内容から、明らかに私よりも経験が少ないだろうと思われ、あまり気分が良いものではありませんでした。
私は自分のレベルはまだまだと思っていますし、上には上がいると自覚しているつもりですが、この方のお話からは、私に対する敬意は一切感じられず、ただ自分の方が明らかに年上だというだけで、一方的な“上から目線”で話されたことが、とても不愉快でした。
私がこの方と継続してお付き合いする機会もないので、その場だけのことで終わりですが、これが同じ会社でのこととなると、きっとそうはいきません。私が感じたこんな気持ちが、昔ながらの“命令と服従”による上下関係に通じているのだと思います。
上下関係のベースが「敬意」ということになると、上級生や年長者など、“上”にあたる人たちは、今まで以上に人としての中身が問われることになります。“上”の人ほど、さらに自分を律する必要がある時代になっているのだと思います。
「最近の若い者は礼儀を知らない」「指示命令をきちんとやらない」などと言う上司、先輩がいますが、もしかすると、昔ながらの“命令と服従”に相変わらず頼っているなど、ご自身の上下関係の作り方に問題があるのかもしれません。
また、そのことに一番気づいていないのが、実は“上”の人たち自身なのではないかと思います。
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