小笠原 隆夫
オガサワラ タカオ「不満分子」と「解決者」「改革者」の間のなかなか超えられない壁
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会社への不満というのは、社員であれば誰でも何かしらは持っているものだと思います。不満というのは現状への問題意識であるともいえるので、それを持っているのは決して悪いことではありません。ただし、この不満に対する行動の仕方によって、その人の見られ方は正反対に変わります。
不満を他人のせいにして、一方的な自分の都合ばかりを攻撃的に主張し、自分では行動しない人は「不満分子」と言われ、不満を自分にかかわることと思い、今までよりも良くするために、他人を巻き込んで解決しようとする人は「解決者」「改革者」だと言えるでしょう。
そして、私が今まで経験してきた中では、「不満分子」はいつまで経ってもどこへ行っても「不満分子」のまま、「解決者」「改革者」も同じく、いつまで経ってもどこへ行っても「解決者」「改革者」でいます。その間にある壁は、思った以上に高いということです。人間の本質というのはなかなか変わるものではなく、基本的な行動パターンも簡単には変わらないということでしょう。
この「解決者」「改革者」はどこへ行っても基本的に歓迎されますが、これが「不満分子」となったとき、こういう人材を受け入れてしまうと、その後に起こる問題は思いのほか大きくなります。
これは、ある会社で実際にあったことですが、請け負っていたプロジェクトに協力会社から参画していたメンバーから、今の会社を辞めたいがプロジェクトの仕事は続けたいので、その会社に移籍させてほしいという打診があったそうです。
話を聞くと、現職の会社では社員に対する扱いが悪く、いろいろ待遇面の不満があるそうで、改善提案をしてきたが聞く耳を持ってもらえず、ことごとく受け入れられないのだそうです。
ずっと退職したいと考えていたが、今辞めるとプロジェクトにも迷惑がかかるし、仕事は面白いので何とか最後まで完遂したい、そのために自分を社員として雇ってほしいという話でした。
プロジェクトの事情を考えると、人員の入れ替えは確かに面倒ですし、その人の働きぶりもピカイチではないものの、それなりに仕事はこなしています。そんな訳で自社に受け入れることを決め、協力会社に義理を通すべく、この一連の話をしたそうです。
先方の反応はやけにあっさりしていて、問題なく移籍する運びとなりますが、その際に「そちらは本当に大丈夫ですか?」などと聞かれたり、本人と具体的な話を進めていても、何かと条件や要望が多かったりするので、何となく気になっていたそうです。
そして実際に入社した後の様子がどうかといえば、「会社や上司からの指示に反論が多く、結局やろうとしない」「一方的な要求要望が多く、すぐに会社がおかしいと攻撃する」というようなことが続いたそうです。体調不良を理由にした休みや早退が頻繁で、さすがに他の社員からも総スカンを食らい、結局半年ほどで辞めてしまったそうです。
実は本人が言っていた前職での改善提案は、自己中心的に苦情を言っていただけで、待遇の不満は本人の評価が悪かっただけのことでした。先方の会社のあっさりした反応は、「不満分子」の厄介払いができるという安堵だったということは、後になってわかったことでした。
これを防ぐ第一の方法は、こういう人を採用しないことですが、実際に本人の話聞いて、それを善意に解釈していると、なかなか排除しきれない部分があります。そもそも数回の面接やテストをした程度で、その人のすべてを知ることは不可能です。
しかし、気をつけてみていると、この「不満分子」の要素をすでに持っているような人は、その片鱗が行動の中のどこかに必ず出て来ます。この例の場合では、先方の協力会社にもう少し話を聞く、初めは契約社員のような形で仕事ぶりを見極めるなどということもできたはずです。
人を採用するということでは、やはりできる限りの観察と情報収集、そして気になることがあれば慎重な対応が必要だと、あらためて思います。
「解決者」「改革者」は組織を活性化させ、「不満分子」は組織を腐らせます。
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