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「長期視点を捨てる」というチーム戦略の話

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社員にやる気を出させるヒントになるエピソード集 現場の事例・私の体験

 数年前のものですが、興味深い内容の記事がありました。

 スペインのサッカー一部リーグに、アトレティコ・マドリードというクラブがあり、そのチーム戦略に関するものです。

 

 決して裕福ではない中小クラブですが、バルセロナやレアル・マドリッドといった超ビッグクラブと優勝争いをするなど、リーグでは強豪チームとされます。

 元アルゼンチン代表だったシメオネが監督ですが、経営戦略の視点から、彼とチームを研究・分析した論文がウェブマガジンに掲載されています。

 ここでは、「一試合ずつ進んで行く」という監督の方針が、常に長期視点を持つビッグクラブとは対照的な短期視点であり、これが大企業と争う中小企業にとっても有効だと説明されています。

 

 例えば人材確保では、才能開花が間近であったり全盛期であったりする選手は、しばらく先も見込めるという点で効率的なチーム強化に適していますが、値段も高く財力があるビッグクラブしか雇えません。これは会社でも同じで、大手企業が有能な人を金銭的な好条件で集めてしまいます。

 そうなると、中小クラブや中小企業は別のやり方が必要であり、それが短期的戦略だといいます。

 

 以前はアトレティコ・マドリードもビッグクラブと張り合って、しばらく活躍が見込めるタレントの獲得に大金を使っていましたが、シメオネが監督になってからはそういう投資をやめました。

 補強は前年活躍した選手を売るところから始め、その資金で「いま必要な選手」を先のことは気にせずに買うそうです。例えば、少なくとも来年は十分活躍できるという、経験豊富なベテランに目を向けています。

 そのチームを適切なコーチングで団結させ、今いる選手をいかに効率的に活躍させるかという、「総資本回転率」を高める発想で、ビッグクラブに対抗するチーム力を生み出していくということでした。

 

 最も大事なのは「コーチング」で、新加入者に戦術(仕事内容)を理解させるだけでなく、クラブ(会社)への帰属意識と責任感を短期間に持たせるために共通の目標を明確にし、互いを助け合う姿勢を植えつけるためにチーム内の自由なコミュニケーションを確立し、練習(仕事)においては柔軟さと忍耐強さも求められるということでした。

 

 これは多くの中小企業から聞く話で、大企業出身のベテランに、経験を期待して入社してもらったものの、結局はうまくフィットせずにお互いに不幸な結果になってしまったというものがあります。

 こういう会社では、「大手のベテラン人材は受け入れが難しい」という結論になってしまっていますが、この記事から思うのは、「コーチング」するべきこととして挙げられている、

「仕事を理解させる」

「帰属意識と責任感を持たせる」

「そのために自由なコミュニケーションを図る」

「仕事では柔軟さと忍耐を持つ」

という働きかけが、実は不足していたのではないかということです。

 

 たぶん、ベテランだからという若干の遠慮もあり、あまり事細かな説明をせずに本人にお任せのような状態になり、そのせいで思ったほどの成果が出ず、経験してきた企業文化の違いから、期待とは食い違うミスマッチが起こってしまっています。

 そもそもベテランは手がかからずにすぐに成果は出ると思っているので、忍耐が必要などとは思ってもおらず、結果的にうまく活かせなかったということが多々あったでしょう。

 

 もちろんベテラン人材は、新天地のしきたりに合わせることが必要ですが、ベテランなりに培ってきたやり方がありますし、当然プライドもあります。受け入れる側はその点を理解し、いかに能力が発揮しやすい環境を作るかということも必要です。

 年長者やベテランは「柔軟性が足りない」「環境に適応しづらい」などと敬遠する向きもありますが、「ベテランだからできて当たり前」と、あまり働きかけをせずに放置してきたようなところがあるのではないでしょうか。

 

 私は日本が少子高齢化に向かっていく中で、「能力はあって文化の違う人材をどう活かすか」は、特に中小企業にとっては示唆となる内容だと思います。

 「あえて短期的視点に徹する」という考え方も、これから必要性が高まってくるのではないでしょうか。

 

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