「自分が上」と意識すると高慢になり、「不平等」を感じると行動に出る
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私自身は直接遭遇した経験がありませんが、飛行機内での暴言や暴力、マナーに反する行為をときどき耳にします。
これはアメリカ科学アカデミーの研究ですが、旅客機の乗客が争ったり暴れたりするような騒ぎを引き起こす一因に、ファーストクラスの存在にあるかもしれないという結果が発表されたそうです。
それによると、ファーストクラスがある旅客機では、エコノミークラスの乗客が騒ぎを起こす確率は、ファーストクラスがない旅客機の3.84倍に上るそうです。
また、搭乗の際にファーストクラスの区画を抜けてエコノミークラス区画に入った乗客が騒ぎを起こす確率は、直接エコノミークラスに入った場合の2.18倍だったとのことで、この論文をまとめた大学教授は、「人は貧しさや不平等を感じると、行動に出る傾向が強まる」と解説しています。
さらに、騒ぎを起こすのはエコノミークラスの乗客だけでなく、全乗客がファーストクラス区画を通って搭乗する場合と、それぞれのクラスが別の入り口になっている場合を比べると、ファーストクラスの乗客が騒ぎを起こす確率がほぼ12倍になるそうです。
「社会的に高い地位にある人が自分の地位を意識すると、反社交的で高慢な態度になり、思いやりが薄れる傾向がある」とのことです。
この調査結果は、あくまで一つの見解ですが、私の経験してきた中で、これを会社組織に当てはめて考えてみると、思い当たることがいくつかあります。
私が知るのはほんの数人ですが、昇格して肩書がついたとたんに態度が横柄になり、言葉遣いが変わり、一方的で強引な要求が増えたという人がいました。「自分を敬え」と露骨に言ってくる人もいました。調査結果にある「自分の地位を意識すると高慢な態度になり、思いやりが薄れる傾向がある」ということに近い感じがします。
また、社内で競争意識を植え付けようと、給与格差を広げてその金額をすべて公開した会社がありました。しかし、その結果としては、健全な競争は生まれず、ただ不満とねたみが増幅しただけでした。ある日突然怒りを爆発させたり、何の前触れもなく辞めてしまったりする例が続出するようになりました。
建前ではルールに基づいた格差なので、表立って不満は言いづらく、しかし実際には不公平を感じることがたくさんあり、そんな不満が積もり積もって爆発してしまう感じだったのでしょう。
「不平等を感じると、行動に出る傾向が強まる」という調査結果と似ています。
結果ばかりの成果主義がうまくいかなかったことにも共通しますが、格差を見せつけることは、勝ち組と負け組のどちらにいても、結局はお互いの思いやりを欠き、相手に対する不満やねたみの感情を持ち、結果として対立を生むだけで、人のモチベーションにはつながりません。
もちろん、格差を完全になくすことはできませんし、全員にとって完全にフェアな環境もあり得ません。ただ、これらの適切な落としどころを考えていかなければ、人の意識は決して前向きにはなりません。
完全な正解はたぶんありませんが、組織作りの中では、これからもずっと考え続け、試行錯誤を続けていく必要があるのだと思います。
このコラムの執筆専門家
- 小笠原 隆夫
- (東京都 / 経営コンサルタント)
- ユニティ・サポート 代表
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