「優秀なマネージャー」は「優秀な部下」を囲い込まない
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2月になると、そろそろ次年度に向けた計画や社内の組織体制づくりが本格化し、個々の社員の異動や配置転換なども決まり始める頃だと思います。
人事異動の進め方というのは、会社によって様々です。
社長の鶴の一声のところも、人事部が中心で調整するところも、当事者の部門責任者同士で折衝するところも、またそれらを使い分けるようなところも、本当にいろいろです。
ただ、異動の際は、本人への伝達よりも先に、直属の上長へ打診や相談、もしくは通知などがある会社が多いと思います。
そんな中で、私が人事の立場でかかわった経験として、直属の上司が部下の異動に対して強く抵抗することがあります。
やはり、優秀な部下、気心が知れた部下、自分にとって使いやすい部下などは、できれば自分の手元に置いておきたいということでしょう。
また、「自己申告」「社内公募」「フリーエージェント制度」など、社員自身の希望で異動を促進する制度がありますが、実際に希望が叶うのは1割程度というような会社も多く、制度がなかなか活性化しません。
もちろん仕組み自体の問題もありますが、本人の意志の意思に反して直属上長が消極的なため、それが影響していることがあります。
確かに、自部門の事情を中心に考えれば、主要メンバーを囲い込みたいのは当然かもしれませんが、人事異動を避けることには、いろいろなデメリットがあります。
例えば
◇社員の適性を見出す機会が失われ、 適材適所の配置ができない
◇社内のコミュニケーションネットワークが広がらず、部門内に閉じた硬直した環境になる
◇職務のマンネリ化と、それに伴う社員のモチベーション低下のおそれがある
などといったことです。
やはり、マネージャーの立場であれば、自部門だけの「部分最適」ではなく、組織全体の状況に目を配った「全体最適」の考え方が必要です。
これは、ある会社の課長の話ですが、部下への異動打診に対して、「彼には、○○の適性があると見ていて、本人もそのキャリアに興味を持っているので、あと1~2年は自部門のプロジェクトで経験を積ませ、他部門でも通用する基礎作りをさせたい」と言い、異動の見送りを会社側に納得させたことがありました。まさに社員と会社を、どちらもWin-Winにする「全体最適」の視点です。
こういう視点がない自部門の都合だけを優先した「部分最適」の主張は、マネージャーの単なるわがままと同じです。それでは会社の業績は上がりません。
「会社が決めたこと」と何も考えず、ただ長いものに巻かれるような態度はダメですが、組織の中で、自分たちの都合だけを主張する姿勢にも問題があります。
マネージャーが自部門の「利益代表」となっているような会社は、会社全体の業績は伸びず、かといって働きやすい環境がある訳でもなく、保守的でチャレンジする姿勢も希薄だったりします。
マネージャーの立場であれば、人事異動に限らず、会社の施策に対する意見や行動が、「全体最適」の視点になっているのかどうかは常に意識しなければなりません。
このコラムの執筆専門家
- 小笠原 隆夫
- (東京都 / 経営コンサルタント)
- ユニティ・サポート 代表
組織に合ったモチベーション対策と現場力は、業績向上の鍵です。
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