評価する上で考えなければならない「主観は無くならない」という前提
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体操競技やフィギュアスケートなど、スポーツの中でも審判の採点によって勝負を決める「採点競技」と言われるものがあります。
スキージャンプにも飛距離だけでなく飛型点という採点部分がありますし、他にもシンクロナイズドスイミングや水泳の飛び込み競技、モーグルやスノーボードなどの競技があり、オリンピック種目になっているものの中でも、「採点競技」は意外に多いように感じます。
この採点結果に関しては、その競技の勝敗を分けるということで、常に議論があります。間違っている、不公平といった批判的なものから、妥当であったというもの、さらには採点基準やルール変更の影響など、様々な分析がされます。
国際試合などとなれば、自国の選手には肩入れするものですし、負けたとなれば文句の一つも言いたくなるのが人情でしょう。いずれにしても「採点競技」というのはなかなか難しいものだと思います。
少し次元は異なりますが、同じく「採点する」ということに関して、ある会社での人事評価結果を、評価者である上長にヒアリングをした時のことです。
この会社では本人に自己評価をさせ、上長はそれを確認しながら評価をします。そこには当然、本人評価をさらに引き下げた悪い評価と、本人評価から上がる良い評価をされる者がいます。
それぞれの理由を評価者である上長に尋ねたところ、悪く評価した者についてはできなかったことや足りなかった事柄がたくさん挙げられ、良い評価をした者では頑張ったことやできたこと、成果が出たことが多く挙げられました。
逆に、悪い評価の者の頑張った部分や、良い評価の者の足りない部分といった、反対側の評価が出てきません。話しぶりを見ていると、どうも思い込みも含めた、「一事が万事」という見方になってしまっているようでした。
このあたりを指摘した上で、あらためて評価結果を見直すことになりましたが、こういうことは会社の中では往々にしてあることです。
こういうことに対して、「評価基準がはっきりしない」「評価者のスキルが足りない」などと指摘されることも多いでしょう。それぞれ間違った指摘ではないと思います。
ただ、もしもここで、「評価基準をはっきりさせる」としたとき、誰が評価しても同じ結果になるようにするためには、すべて明確に数値などで表現できる評価基準にするしかありません。
しかし、普通に行われているビジネスの中では、数値には置き換えられない非定型的な仕事内容も多く、基準を明確にすることにはおのずと限界があります。
また、評価者スキルも、教育訓練や実施した結果の振り返りなどを通じて、向上させていくことはできますが、それでも絶対に評価者間の格差がないというレベルに達することはありません。
前述の体操競技でも、世界選手権で審判を担うような、教育もされて経験も積んできた人たちが、限られた時間内に直接自分の目で見ることができる演技を審査していたにもかかわらず、審判ごとの採点は、必ず差が出てきます。主観による判断の違いがどこかに出てしまうということです。
これが人事評価となれば、まったく異なる業務をしている人たちを、直接には見ていない部分も含めて評価しなければなりません。場合によっては教育が十分でない人が評価者になることもあり得ますから、主観が入る余地はさらに大きいということでしょう。
こうやって見ると、どんなプロフェッショナルであっても、人間が人間を評価しようとする限り、主観は絶対に排除できないということです。
主観を減らす努力は必要ですが、評価という行為をする上では「主観は無くならない」という意識が必要だと思います。その前提で制度を組み立てなければならないでしょうし、結果もその前提で使わなければなりません。
評価するという行為の中では、主観をなくす努力が強調されますが、それをすべてなくすことは、残念ながらできません。
「主観は無くならない」という前提で、制度や運用を考える方が、結局は現実的ではないかと思います。
このコラムの執筆専門家
- 小笠原 隆夫
- (東京都 / 経営コンサルタント)
- ユニティ・サポート 代表
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