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「普通」という基準の怖さと危うさ

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社員にやる気を出させるヒントになるエピソード集 私の思い・考え

「普通は気づくはず」

「普通なら出来るでしょう」

「それくらいは普通だろう」

 レベル、能力、さじ加減、程度といったものを、「普通は・・・」という言葉で表現することがよくあると思います。私もつい言ってしまうことがあります。

 しかし、この「普通」という言葉には、注意が必要です。何かの尺度を示す上での具体性が何もなく、「普通」と言っている本人の主観でしかないからです。


 「普通」の対義語を調べると、主に4つの言葉が挙げられており、「奇抜」「希少」「異常」「特別」とありました。他には「特殊」「特異」「奇異」があり、これらをひとまとめにして「普通じゃないもの」と言われれば、私はそれほど違和感はありません。


 「普通」という言葉の意味には、

・特に変わっていないこと

・ごくありふれたものであること

・広く通用する状態のこと

などとありますが、「普通」と「普通じゃないもの」の境界線は必ずしも明確なものではありません。グラデーションのようにつながっていて、個人個人が自分の感じ方によって、それぞれが線引きをしているように思います。

 法律違反すれすれでも「それが普通」という人がいますし、もっと厳しいモラルでの「普通」もあります。その良し悪しはともかく、「普通」は人それぞれで違っていて、物事を判断する共通基準にはなりません。


 ここで起こる問題は、「普通は…」という言葉で、自分の基準に相手を取り込もうとすることです。いかにも正論に聞こえる「普通」という言い方での強制です。

 特にリーダーの立場にいる人が、メンバーに対して「普通」という言葉を使い始めると、いろいろ危ういことが起こります。最も多いのは、自分の「普通」の合致しないメンバーを認めず排除し始めることです。こうなってしまうと、メンバーは嫌々でもリーダーの言う「普通」に合わせるか、排除されることを受け入れるかの二択しかなくなります。これはパワハラと言われても仕方ありません。


 企業の現場でよく聞く「普通」の一つに、礼儀やマナーに関する話があります。

 「普通はお礼を言いに来るだろう」「普通は挨拶するだろう」「普通は遠慮するだろう」など、聞いていて納得することも過剰と思うことも両方ありますが、これもあくまで私の「普通」であって、相手にとってどうかはわかりません。


 日本人はどうも「普通」という言葉が好きなようですが、会社のように様々な価値観を持った人が集う場所では、「普通は…」で終わらせずに、その時の判断基準をしっかり言語化して共有する必要があります。

 例えば、「お礼や挨拶がないとマイナスの感情を強く持つ人がいる」「誰がそういう感情を持つかはわからないので、ビジネスの場では一番厳しい基準に合わせて行動するのが得策」と説明して共有すれば、それをチームの「普通」にすることができます。


 ある国会議員の雑誌投稿に、差別的な内容があったとして取り上げられていましたが、その論拠として語られていた言葉は、「普通は…」「一般的には…」がほとんどでした。

個人の主観に基づく話を、「普通は…」という言葉でいかにも大多数の共通認識のように示すのは、リーダーが言い出す「普通」から始まる危うさと共通しています。


 「普通」というのは、基準のようで基準ではありません。価値観が多様化した昨今では、安易に「普通は…」で処理せずに、その中身を説明、確認、共有していくことが必要になっています。



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