不動産業者も見落とす、物件購入の落とし穴‐【32:位置指定道路の調査とリスクヘッジ 実践編④】
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今回の物件は、建築基準法の道路が出来た当時、本地である地番787-9は
未接道でした。
それを販売分譲するにあたって、道路ラインと本地の隙間にある土地を購入し、
本地に取り入れることで接道要件を満たした物件でした。
しかし、ここで一つ確認しておかなければならないポイントがあります。
それは、本当に指定された道路部分に沿った測量・分筆・本地への合筆
だったのかどうかです。
地番(財産境)は、隣地の所有者と立合いし、確認し合う事で決まってきます。
ところが、建築基準法の道路の範囲が、どこからどこまでかという見解は違う
場合があります。
今回で言えば、道路位置指定図に基づいた道路部分の範囲が分からなければ、
そこに合わせて未接道の原因になっている隙間の範囲も特定できないし、
指定道路部分に接するように分筆合筆していくことも予想で行っているだけの
行為です。
特に今回の位置指定図は、地番境に沿った位置を道路部分としていないので、
特定するのに特定行政庁との協議は大切です。
・この物件がそのような協議を行い、指定道路位置を特定しているのかどうか。
・それを行っているのであれば、787-84、85を分筆合筆する前の日付で行っているか。
などを確認します。
今回の物件では、道路位置を特定する相談・協議などはされていないとの
回答でした。
この部分が指定された道路部分であろう予想位置を分筆し、譲ってもらっただけで、
後になってから、実は道路のラインはもっと奥(対面側)にズレていましたと判明し、
結局また未接道と言われてしまう可能性が残っている状態です。
これでは安心安全な不動産取引ではありませんから、このリスクヘッジが必要です。
この契約では、契約をしてから引渡日までの1ヶ月半の間に、
買主が自己の負担であれば、引渡前でも道路調査をしても良く、
第三者による立入り、使用、周辺聞込み等の作業を行うことの了承、
また売主は必要な申し出に協力することを承諾する旨の特約を設け
契約しました。
役所に聴取した結果、道路調査は3週間程度で結果がでるとのことですから、
その調査結果次第(未接道など)で、買主には手付放棄か、又は瑕疵による
目的未達成か、引渡し前に解約することも選択できます。
また売主が再度、判明した道路ラインに合わせて接道要件を満たす為の
動きをとる期間が生まれ、引渡日を延期し改めて接道要件を満たした
安全な物件として引渡してもらう等の段取り調整もできます。
このように突き詰めた調査を進めていくと、物件の問題点やリスクが
発見されますが、そのほとんどは契約条件等の調整で対策を講じること
ができます。
次回の道路調査の注意点シリーズは、42条1項1号について解説します。
道路法による道路として、宅建業者は「幅員4m以上の公道だから問題ない」と、
油断が生まれやすい道路の落とし穴です。
道路付けの良い物件と言うと、道路種別が42条1項1号であることが多いので、
良い物件を買ったつもりが、思ってもみなかったトラブルにならないよう、
お役立て頂けたらと思います。
■不確定な契約条件の注意点-16:位置指定道路の調査とリスクヘッジ 実践編①
http://profile.ne.jp/w/c-105248/
■不確定な契約条件の注意点-17:位置指定道路の調査とリスクヘッジ 実践編②
http://profile.ne.jp/w/c-105459/
■不確定な契約条件の注意点-18:位置指定道路の調査とリスクヘッジ 実践編③
http://profile.ne.jp/w/c-105572/
■不確定な契約条件の注意点-19:位置指定道路の調査とリスクヘッジ 実践編④
http://profile.ne.jp/w/c-105862/
■道路調査の注意点【建築基準法の道路とは①】
http://profile.allabout.co.jp/w/c-80720/
■道路調査の注意点【建築基準法の道路とは②】
http://profile.allabout.co.jp/w/c-80721/
■位置指定道路の注意点①【位置指定道路とは】
http://profile.allabout.co.jp/w/c-80976/
■位置指定道路の注意点②【私道であることについて】
http://profile.allabout.co.jp/w/c-81004/
■位置指定道路の注意点③【未接道・建築不可:突き当たりの敷地について】
http://profile.allabout.co.jp/w/c-84148/
■位置指定道路の注意点④【未接道・建築不可:指定された道路位置のズレについて】
http://profile.allabout.co.jp/w/c-84803/
■位置指定道路の注意点⑤【未接道・建築不可:測量士の間違い】
http://profile.allabout.co.jp/w/c-84815/
■位置指定道路の注意点⑥【建築線による想定外とは】
このコラムの執筆専門家
- 藤森 哲也
- (不動産コンサルタント)
- 株式会社アドキャスト 代表取締役
将来必要なお金を把握せずに、家を買うのって怖くないですか?
売ってしまえば終わり・・・になりがちな不動産業界の現状に疑問を抱き、不動産購入には欠かせないお金の勉強をスタート。FP資格を取得。住宅購入に向けての資金計画、購入後の人生設計までトータルにサポートする「一生涯のパートナー」を目指しています。
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