小笠原 隆夫
オガサワラ タカオ「当たり前の研修」は無駄なのか
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「そんなのわかり切ったこと」「当たり前じゃん」・・・。研修をやっている中で、こんな反応をされることがあります。そういう声が出てくるということは、その研修を前向きにはとらえていないということでしょう。私も今は講師の立場が多くなりましたが、自分が受講者のときはこんな風に思うことがありました。
でも、良く考えれば「当たり前の内容」というのは“当たり前”のことです。誰も知らない新しい理論で、みんながみんな初めて見聞きするような内容の研修なんて、そうそうあるものではありません。
研修でやることといえば、ほとんどが今まで言われてきているもの、セオリーとしてすでにあるもの、昔からの原理原則として存在するもののはずです。“当たり前”のことにあえてスポットをあてたり、あらためて意識させたりして、知っている当たり前のことだけど、できていないんじゃないか、実行していないんじゃないかということに気づいてもらうために、講師の人たちは伝え方や意識の向け方にさまざまな創意工夫をします。
先日あるところで聴いたお話ですが、研修などのOff-JTでできるのは、「無意識で出来ていない」ことを“意識させる”ところまでで、その後の「意識してもできない」→「意識すればできる」→「無意識でもできる」というステップを踏んでいくためには、本人の自覚と周りの人からの働きかけが大きいのだそうです。研修でできるのはほんの入り口の部分で、人材育成全体で考えればその1割程度とのお話でした。
「たった1割だから研修なんて無駄なのか」というと、そういうことではなくて、「気づき」という人材育成の入口として、いかにうまく活用するかが大事ということでした。
だいたいよくあるパターンは、研修を受けた直後は感度が上がって「目からウロコ」なんて思っていても、そんな気持ちとは裏腹のいつもの環境に戻ってしまえば、徐々に火が消えていつの間にか元通りということです。せっかく点いた火を消さないためには、職場の雰囲気作り、上司の意識改革も必要になります。研修で学んだ内容を、日常の仕事でかかわる直属上司や、所属する職場全体で共有するなんてことも重要かもしれません。
「そんなの当たり前」という人はおおむね研修に対して好意的ではありませんが、そんな人に限って、やっていない、実行できていないということが多いはずです。自分自身を振り返ってもそうですし、やっぱり「知っている」のと「できる」のとは大きく違います。
もちろん研修のやり方に工夫は必要ですが、その後をどうやって行くのかがもっと大事なことのように思います。
「当たり前の研修」という批判が出たり、「研修が無駄になっている」と感じるならば、研修そのものの問題とともに、職場環境、そういう発言が出る雰囲気、その人を取り巻く周囲の人たちの方にも大いに原因があるように思います。
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