小笠原 隆夫
オガサワラ タカオ先進企業ほどこだわっている「直接会って話すこと」
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そもそもは1990年代半ばからですが、東京の渋谷周辺にはITベンチャー企業が集結してきていて、これをアメリカのシリコンバレーになぞらえ、渋谷の(渋い:Bitter)と(谷:Valley)をかけて「ビットバレー」と呼ぶそうです。
ITバブルの崩壊によって企業の倒産や撤退が相次いで、この動きは下火になっていたようですが、当時生まれたサイバーエージェント、ディー・エヌ・エー、LINEといったIT企業が、渋谷に拠点を構えながら“メガベンチャー”に成長し、それらの企業を取引先とする“スモールベンチャー”が、再び渋谷周囲に集まる動きとなっています。
渋谷に集まる理由は、「流行に敏感でクリエイティブな感性を持った人が集まりやすい」「IT企業の欲しがる人材が多い」「交通の便が良い」などいろいろあるようですが、その中に、「お互いが近くにいることで、気軽に会って同僚感覚で話ができる」というものがありました。別の会社同士でも、「今から10分だけ話そう」とか「ちょっとランチをしよう」といったことで、近い場所で働いていればそれが可能になるということです。
さらに、商談や打ち合わせを、濃い密度で効率的に行うことを考えると、思い立ったらすぐに会って話ができる、徒歩圏内のような近い距離にいることが、ビジネスの上ではとても有効だということでした。
今どきのIT企業というと、様々なツールを駆使し、直接対面のコミュニケーションにはこだわらないと思いがちですが、実際はかなり違っていて、直接会って話すことをとても重視しています。
今の技術では、それこそネット環境さえあれば、在宅勤務でもノマドでも、どこでも仕事をすることはできますし、メールやチャットのような手軽なテキストコミュニケーションがあります。さらに、テレビ電話やテレビ会議なども、大げさな設備がなくても使うことができます。
ただ、日常業務はそれでよくても、事業連携やパートナー探し、資金集めといったことでは、そうはいきません。気軽な話から熱い話まで、その時の雰囲気に応じて語り合い、お互いの性格や相性を確認しながら、お互いのより良い距離感を見つけていくためには、やはり同じ時間と場所を共にすることが必要になってきます。様々な形での交流を重ねることが重要ですが、先進的なテクノロジーを駆使する企業ほど、この「直接会って話すこと」を大切にしています。
技術の進歩により、コミュニケーションの手段は多様化してきました。それらをどう使い分けるかが肝心になってきますが、選択肢が増えたおかげで、従来のアナログ的なコミュニケーションのメリットとデメリットがはっきり見えてきたという面があります。
特に、コミュニケーションツールを作り出す側でもあるIT企業の人たちは、手段を使い分けることへの意識が高く、その中でも「直接対話のコミュニケーション」を重視しているのは、他のツールではつぶしが効かない大きなメリットがあるからでしょう。
ある業界の団体では、年配者が多いためにメンバーの3割は未だにメールアドレスすら持っておらず、電話か郵便でしか連絡が取れないそうです。そういう人たちも同じように、「直接会って話すのが大事」と言いますが、説得力が全く違う感じがします。
その場に応じた適切なコミュニケーション手段を考えて実践するということ、その中でも実際に会っての対話を大切にするということは、先進企業や新興企業、若い人たちの方がよほど意識は高いです。
これこそ、本当の意味での「コミュニケーション上手」と言えるのではないでしょうか。
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