小笠原 隆夫
オガサワラ タカオ採用面接で思う「主観を集めれば客観になる」ということ
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採用面接を通じて応募者に向き合っていると、常に迷いが付きまといます。応募者の能力評価という側面だけでなく、社風や既存社員との相性、仕事の適性なども合わせて見極めるということなので、そうそうはっきりと線引きできるものではありません。
もちろん、問題なく合格、逆に絶対に不合格ということはありますが、大半の場合はその間のグレーゾーンに入ります。採用基準を客観的に表現するというのは、現実にはなかなか難しいことです。
ある会社では、新卒採用での面接官を初めて経験する若手社員の数名が、「他人の人生を左右するかもしれないような重い評価をする自信がない」と言っていたことがあります。
自分の慣れや立場の勘違いから、ともすれば応募者を見下すようなベテラン面接官がいることを思えば、応募者の立場を尊重した上での責任感は、すばらしいことだと思います。
その時に私がこの若手面接官たちにお話ししたのは、「まず初めの評価は、自分が好きか嫌いかという主観でも構わない」ということです。
「複数の面接官が会う中で、全員が自分の好き嫌いで判断したとしても、例えば5人のうち3人が嫌いと感じたとしたら、それは一緒に仕事をする仲間としては、何かしら問題がある」ということであり、「一つ一つの意見は主観であったとしても、数が集まれば客観になる」ということです。
「人」を相手にする場面で、特に面接のようなオフィシャルな場面であればなおさら、その人を好きとか嫌いとか、感情で主観的な反応をすることを避けようと考えるのは当然の心情だと思います。
ただ、すでに述べた通り、採用基準を客観的に表現するのは、実際にはなかなか難しいことです。「人」のことを理性、論理だけで判断することは簡単にはできません。
また理性的に対応しているつもりでも、それは結局自分の持っている思い込み(スキーマ)による結果ということが、かなりの確率で起こります。
例えば「体育会出身者だから根性がある」「営業経験が長いから交渉力がある」などというのは、仮にそういう傾向があったとしても、目の前にいる人がその条件に当てはまるからと言って、必ずしもそうとは限りません。一見すれば論理的、理性的な判断をしているように見えますが、実際には思い込みに伴う主観と言っても良いと思います。
中途半端な思い込みに左右された主観よりは、目の前の人を見た時の純粋な印象による主観の方が、面接などにおいてはよほど有用です。純粋な主観の数が集まれば、より一層客観に近づけることができます。
論理的、理性的に判断しようとすることが、必ずしも客観的であるとは限りません。うわべだけを見た思い込みなど、少し偏った主観を含んでいる可能性があります。
こう考えると、「主観が集まれば客観になる」ということは、さらに意識して肯定的に捉えていくことが賢明なのではないかと思います。
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