小笠原 隆夫
オガサワラ タカオ「叱られるとやる気を失う」と言われても・・・
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日本生産性本部が行った「職場のコミュニケーションに関する意識調査」の中で、課長に対して「部下を叱ることについて、どのように考えるか?」という尋ねたところ、89%が「育成に繋がると思う」と回答し、反対に一般社員に「上司から叱られると、どのように感じるか?」と聞いたところ、56.8%が「やる気を失う」と感じていると回答したそうです。ただし42.4%は「やる気になる」と回答していて、感じ方が二分されているのだそうです。
この結果の分析として、「“叱ること”による育成法も一定の効果はあるが、半数以上が“やる気を失う”と答えていることを考えると、部下一人ひとりにあった育成法を考えることが重要だ」とのことでした。
これを見て、「叱られるのは自分たちが悪いからでしょ!」「こっちだって言わないで済むなら言いたくないよ!」「君らのためを思って、あえて言ってやっているのに!」なんていう管理職の方々は大勢いらっしゃると思います。こんな調査結果を出されても、「じゃあ、どうすりゃいいの!?」という思いもあるのではないでしょうか。
私がこの結果を見て思ったのは、こうやって漠然と聞かれると評価は二分されるかもしれないが、こんな場面でこんな言い方でという具体的な条件が示されていると、その条件によって結果が変わってくるのではないかということです。「叱られるとやる気になる」と答えている全員が全員、何を言われてもやる気が出るわけではないでしょうし、「叱られるとやる気を失う」といっている人が、すべての場面でそうだとは限りません。
叱るということは、本当に難しいと思います。管理者として部下に言うべきことは言わなければなりません。ただ、その意図が相手に伝わっていなければ感情的なしこりを生むだけで、あまり効果的とは言えません。「叱ることが育成につながる」と管理職は思っていても、それが部下に伝わっていなければ、単に“言葉での体罰”のようなものです。
「叱られる」というのは、本人にとってうれしいことではありません。それでも納得できる「叱られ方」というのは、その内容に対してだけでなく、誰に言われるか、その話し口調や言い方、ニュアンス、どこで言われるか、いつ言われるか、一対一か、みんなの前か、など、いろいろなことが絡んできます。
例えば、大して重要とも思えない内容で、夜中に上司から家に電話がかかってきて叱られたとしたら、話の理屈は合っていても反感を持つのが普通でしょうし、たぶんやる気はなくなり、そんな上司とはできるだけ接したくないと思ってしまうのではないでしょうか。
やっぱり結論は、この調査の評価にもある通り、「部下一人一人に合わせた方法で」というところです。あり来たりではありますが、日頃から部下とコミュニケーションをとって信頼関係を作り、いざという時に叱ることができるようにしておくことが大事だと思います。そうは言っても人間同士の相性はありますから、すべて自分でどうにかしようとせず、“他人の口を借りる”というような工夫も必要かもしれません。
こんな調査結果を見ると、ついつい叱ることを躊躇してしまいますが、それも決して良いことではありません。やっぱり見て見ぬふりだけは絶対にダメだと思います。
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