- 佐藤 昭一
- NICECHOICE 佐藤税理士事務所
- 東京都
- 税理士
対象:税務・確定申告
- 平 仁
- (税理士)
定期購読している速報税理2011年11月11日号に興味深い裁決の記事が載っていました。
役員給与は決められた改定時期以外に変更することは原則として制限されています。
決められた改定時期とは、一般的な法人は事業年度開始してから3ヶ月以内です。
この改定時期以外に変更をした場合には、役員給与の一部が税金を計算する際に経費として認められません。
役員給与を変更することは会社で決められたルールにそって変更をすることは可能です。しかし、税法で認められる改定時期以外で変更をすると一部経費とならないため、その点は変更をするデメリットとなります。
原則として制限されている改定時期以外の変更ですが、会社の経営状態が著しく悪化した場合には変更が認められています。しかし、著しく悪化した場合とはどの程度の悪化なのかは余り明確ではありませんでした。
今回の裁決では、その著しい悪化がどの程度のものなのかが争点となりました。
経常利益の6%減少は著しい悪化といえるか?
事件の経緯は記事によると次のように書かれていました。
経常利益が対前年比で6%減少したことを理由に代表取締役に支給していた役員給与を決算月の2ヶ月前に減額しました。
代表取締役が設定した業務目標を達成できなかったことが減額の理由です。
それに対し課税庁側は、経営状態の著しい悪化には該当しないとして更正処分をした所、審査請求となり、最終的に審査請求を国税不服審判所が棄却しました。
争点は、経常利益の6%の減少が経営の著しい悪化と言えるのかという点です。
審判所はこの点に関して、業績悪化改定事由とは、法人の経営状況の著しい悪化その他これに類する理由によりやむを得ず役員給与の額を減額せざるを得ない事情がある場合をいうという解釈を示し、役員給与を減額した事業年度の売上高、経常利益は過去の事業年度の業績と比べて何ら遜色がないと指摘し、更に業績目標を達成できなかったことが減額の理由であることを考慮すれば業績が悪化したとは認められないとして棄却しました。
確かに経常利益6%の減少というのは、業績の著しい悪化とまでは言えないものと思われます。著しいという言葉がついているため、役員給与の減額の条件はやはり相当厳しい状態でないと認められないと判断をしていおいた方がいいと思います。
このケースで取れる対策はあるのか?
では、実際にこのようなケースに遭遇した場合に取れる対策としてはどのようなものが考えられるでしょうか。いくつか考えてみました。
1.決算期を変更する
決算期を前に変更すれば、役員給与の改定が認められる時期が早まりますので、役員給与の減額をするということは可能です。
2.経費を削る
役員給与を減額する理由が会社の決算数値をよくするためというのであれば、会社の無駄な経費(例えば節税のために入っていた保険を解約するなど)を削るという方法が考えられます。
3.役員報酬減額分の現金を会社に贈与する
業績目標の未達が減額の理由ですので、代表取締役として給与を減額しないと示したつかなかったのかも知れません。その場合は、減額相当分の現金を会社に贈与することで減額をしたことと同様の効果は見込めます。ただし、一度支給をしているため、社会保険、所得税、住民税の負担は減額前の金額のままとなります。
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