あなたは、部下や後輩にできるだけ権限委譲して、本人の判断でやらせようとするタイプですか?それともできるだけ経験やノウハウを伝えようと、細かく面倒を見て指導するタイプですか?
先日、ある会社で退職希望の社員が出てきて、その理由が「きちんとした指導が受けられないので辞めたい」とのことだったという話を聞きました。どうも、それまで属していたグループの細かく関わるタイプのリーダーから、“良きに計らえ”と任せるタイプのリーダーのグループに変わり、その変化を本人が、「教えてもらえなくなった」と感じてしまったということのようです。
また別の会社の例では、「いつまで経っても細かく指示され、任せてもらえないし経験を積めないので辞めたい」と言う退職理由も聞いたことがあります。
部下や後輩への仕事のさせ方として、どんな行動パターンを取るかは、「もともとの自分の価値観」と、「自分の時はどうだったか」の二点によることが多いと思います。「自分の時・・・」には、自分がこうして欲しかった、こうされて良かったという経験はもちろん、こう思っていたけどしてもらえなかった、当時は反感があっても今思えば良かったなど、反面教師や意識が変わった経験なども含まれるでしょう。この二点で行動パターンはほぼ100%決まってしまうのではないでしょうか。
ここで、どちらのタイプが望ましいなどと言うつもりはありません。リーダーとして人扱いの引き出しは多いに越したことはありませんが、タイプはその人の持ち味ですから、簡単に変えられるものではないし、無理して変える必要もないでしょう。
ただそうは言っても、
“任せている“つもりなのに、“押し付けられている”と感じている・・・。
“余計な口は出さないでおこう”と思っているのに“放置されている”と受け取っている・・・。
“丁寧に教えている”つもりが“余計なお世話”と思われている・・・。
こんな認識の食い違いは、好ましいことではありません。
子供にはよく「自分が嫌な事は他人にもするな」などと言います。善悪の区別がはっきりつく事なら、自分の意識だけで判断すれば良いのでしょうが、良し悪しだけでは言い切れない、人によって感じ方が違うような事の場合は、それだけでは足りないと思います。
やはり、業務指示をしたり指導したりする立場であるならば、相手がどんなタイプか、どう感じているかを知っておく必要があります。自分がそうだから相手も同じだろうなどと思わず、「このグループではこういうやり方をするよ」「自分はこういう考え方で接しているが、君はどう思っているか」「ここまでは指示するが、ここから先は任せる」など、自分と相手の感じ方の違いを、しっかりとお互いに口に出して確認し合うことが必要だと思います。
自分の経験で良かれと思っていることであると、それを良かれと思わない人の気持ちには気づきにくいものです。ただ気づかないままに、自分は権限移譲のつもりなのに相手は放置されていると思っていたら・・・。自分は指導しているつもりなのに相手は過干渉と思っていたら・・・。何かものすごくもったいない事のように感じてしまうのですが、皆さんはいかがでしょうか。
このコラムの執筆専門家
- 小笠原 隆夫
- (東京都 / 経営コンサルタント)
- ユニティ・サポート 代表
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