良い企業は、経営理念や企業理念など、自社の原理原則を“一貫”して守り、踏襲しているという所があります。老舗企業などはこういう部分を賞賛されたりします。
一方で“柔軟性”という部分の大切さも言われます。その時の状況に合わせて臨機応変に変わっていくという事です。変化対応力、適応力など、いろんな言い方もされると思います。その時々の判断、決断を賞賛され、良い舵取りをしている経営者が「カリスマ経営者」と言われたりします。
“一貫性”も度が過ぎると、硬直、官僚的、排他的、頑固などと言われ、“柔軟性”も度が過ぎれば優柔不断、(悪い意味での)朝令暮改、思いつき、ポリシーが無いなどと批判されます。
原理原則は一貫して守りながら、柔軟性を持って変化していくという事になるのでしょうが、よくよく考えればそれぞれ相反すること。守るべきか、変わるべきかの境目って一体どこなのだろうと、いつも思います。
世の中にたくさん出ている経営者や評論家、コンサルタントの方々の経験談や考え方、その他いろいろな事例を見ている中で思うのは、一つは「しょせんは結果論である」ということ、もう一つは「自分自身の意見との違いによる」ということでした。
「しょせんは結果論である」という所では、守ったことで結果が良ければ、やはり「一貫性が大切」となりますし、変化したことで結果が良ければ「変わることが大切」となるでしょう。いろいろな予測のもとに最善を尽くした上での結果と思いますが、うまくいくことのいかないこともあります。
良い結果でも悪い結果でも、それぞれ自分で判断したことだからと納得して、その経験則を糧として語っていると感じました。
「自分自身の意見との違いによる」というのは、自分が守るべきと思う事を変えたり、変えるべきと思う事を守り続けたりするなど、自分の意見と実際に起こっていることが異なる時には概して批判的になりがちで、うまくいかなければ「それ見たことか!」となり、うまくいってもあまり正当に評価したくないと思います。一方で守るべきもの、変えるべきものが自分の意見と同じであれば、うまくいけば「当然のこと」と納得し、うまくいかなければ「まあ仕方がない」と次の策を考えるのではないでしょうか。
どちらにも共通しているのは、自分自身の「納得」という部分で、守るべきか、変わるべきかの境目は、結局は自分が「納得」しているところが境目なのだ、というように感じています。
人事管理の中では「納得性」ということの大切さは良く言われます。人事評価も本人が結果に納得するかどうかがその後のモチベーションにおいて重要ですし、目標管理制度などは自己管理目標(自分が納得して決めた目標)をもとにマネジメントを行う仕組みです。仕事上の目標からその都度の作業指示に至るまで、納得しているか否かは仕事のパフォーマンスに影響し、結果を左右することもあります。
良し悪しだけで決められない事柄はたくさんありますが、その結果を肯定的に受け留められるかどうかは、「納得性」がかなり大きく関わっています。人とかかわる中で「納得」を得るためのプロセスというのは、できる限り大切にしていく必要があると思います。
このコラムの執筆専門家

- 小笠原 隆夫
- (東京都 / 経営コンサルタント)
- ユニティ・サポート 代表
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