(続き)・・次に部下がミスをしたか、あるいは仕事の成果が上がらないような場合に、上司は部下にどのように対処すればよいのでしょうか。このような場合には部下の成長を促すためにしっかりと注意する必要がありますが、そのやり方を間違えると部下は大きく傷ついてしまいます。よくありがちなのが「何故できなかったのか?」とか「駄目だねえ!」、「俺の言うとおりにやらなかったからだよ!」などと出来なかった原因を問い詰めたり、部下本人を激しく責めたりする接し方です。
「何故できなかったのか?」などと詰問されることで、部下は自分の至らない点や欠点ばかりに目が行くようになり、仕事を出来なかった言い訳を無意識のうちに探すようになってしまいます。仕事の結果がどうであれ、自分の行なった態度や行動には良い点と悪い点があるものです。ところが出来なかった理由ばかりを問い詰められると、良い点には目が届かずに悪い点にばかり注目するようになり、今後どうするかという建設的な考え方が出来なくなってしまうのです。
また「駄目だねえ!」などと決めつけられることで、部下はまるで全人格を否定されたような絶望感を味わうことになります。仕事はもちろん結果が大切ですが、それと同時に様々な工夫や努力といったプロセスも大切です。ところが上述のようにダメ出しされてしまうと、自分なりに最善を尽くしたプロセスや人格そのものを否定されたような悲しい気分に陥ります。それによって部下はすっかり自信喪失し、前向きに打開策を考える余裕を失い、また人によっては心の病を発症してしまいます。
そのような上司のまずい叱り方は、部下本人の成長の芽を摘んでしまうだけではありません。部署や会社全体にわたって、社員の失敗を上司が追及するような傾向があると、上司自身の信用も失うだけでなく、社員は失敗を恐れて新しいことにチャレンジしなくなり、またミスや悪い情報を上層部へ報告しなくなります。その結果、チャレンジ精神が乏しく、またミスや問題点が放置されたリスキーな職場となり、トラブルが続出して衰退組織になってしまいかねません。
そのような事態を避けて活気ある職場にするためには、部下に対する適切な注意や叱責を心がける必要があります。部下が失敗した場合でも、何故できなかったかと部下本人に焦点を当てるのではなく、「出来なかった要因は何だろう?」とか「何が足りなかったから失敗したのだろう?」などと「事象」に焦点を当て、さらに「どうすれば出来るようになるだろう?」、「今後何があれば上手くいくだろう?」などと、部下本人が今後の改善点を探るための思考を促すことが大切です。
仕事に失敗は付きものですし、ましてや若い社員は失敗しながら成長していくものです。その失敗を糧として部下を成長させていくには、上司と部下本人が一緒になって失敗の要因を分析し、未来に照準を合わせて対策を立てる作業が不可欠です。その際、仕事の結果だけでなく、工夫や努力といったプロセスにも焦点を当てて、良かった点と悪かった点をともに分析していきます。こうすることで部下は過去の失敗にとらわれることなく、今後の成長に向けて思考し行動することができるようになるのです・・(続く)
このコラムの執筆専門家
- 吉野 真人
- (東京都 / 医師)
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