(続き)・・会社や部署として仕事を効率的に行なっていくためには、日常的な「報告・連絡・相談」のプロセスが不可欠です。その重要性を否定する経営者や管理職は殆んどいないといってよいでしょう。ただ実際の企業現場では、報告や連絡をしようとした部下に対し、上司が今は忙しいとばかりに「その程度のことで、いちいち報告するな!」などと、部下の報告を拒否するような言動が少なくありません。このような対応をしていると、部下はどのように感じるでしょうか。
上司にしてみれば部下が報告や相談をしてきたことは、既に職場内で合意済みの事項であったり、マニュアルに書いてあるような基本的事項なので、いちいち報告する必要などない、とでも考えているのでしょう。しかし部下としては、具体的な行程や表現のニュアンス、自分の考えとの若干の相違などによって不安を感じているかも知れません。だからこそ敢えて報告あるいは相談を持ちかけているのであって、決して忙しい上司の邪魔をしよう、などと考えているのではないはずです。
上司からこのように一蹴された部下は、「トラブルを避けなければと念のため報告したのに・・」などと感じ、仕事へのモチベーションが著しく低下してしまいます。そして「こまめに報告を入れたのにこんな言い方をされて、今後はもう何も報告しない!」などとヘソを曲げてしまうかも知れません。その結果、よほどの事態でもなければ上司に報告や相談をしないような部下となり、上司の意向が伝わらず自分の考えだけで行動し、トラブルを頻発するアウトロー部下になる危険性さえあります。
職場全体で上司や管理職が社員の報告や相談を聞こうとしないような風潮が強まると、社員が上層部への報告・連絡・相談を避けるようになり、会社内や部署内の情報共有がきわめて不活発になります。その結果、誰にも相談できない不安やストレスから、社員同士の疑心暗鬼が生まれ、メンタル不調に陥る社員が出かねません。またトラブルの芽に早期に対処することが難しいため、顧客とのいさかいや不祥事などにも発展し、企業としての成長性に赤信号が灯ることにつながります。
職場内の情報共有を活発にしトラブルの芽を早期に摘むために、上司は部下からの報告・連絡・相談を積極的に受けるようにしましょう。一見ささいな報告をしてきた部下に対しても、「報告してくれてありがとう。トラブルにならなくてよかったよ」と感謝の意を伝えます。そうすることによって部下は安心して上司に報告や相談を入れることが可能となり、抱え込んでいる不安や疑問の大半は解消するに違いありません。それによって本来の業務にも一層集中できるはずです。
上司や管理職はさらに踏み込んで、日常から部下の報告・連絡・相談を引き出すようにすることが望まれます。部下の中には引っ込み思案の性格などのため、なかなか言い出せない人がいるものです。そのような部下に対し、業務上の話し合いが終わったところで「他に何か無いだろうか?」などと質問し、言いあぐねているかも知れない報告事項や相談事を引き出します。そうすることによって、部下の口からとんでもない重要な情報が得られるかも知れないのです・・(続く)
このコラムの執筆専門家

- 吉野 真人
- (東京都 / 医師)
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