「週休3日制」の良さそうなこととそうではないこと
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ここ最近、「週休3日制」をすでに導入していたり、導入を検討していたりする企業の話を耳にします。
週休3日制といわれると、多くの人は、「そんな制度があればよい」と思うのでしょうが、いろいろ考えていくと、必ずしも良いことばかりとはいえないように思われます。
週休3日制にする場合、そのパターンがいくつかあります。
一つ目は、純粋に週一日分の時間短縮にする代わりに、賃金もそれに合わせて減るパターン。
二つ目は、1日にあたりの時間を増やすことで一週間の労働時間は変えず、賃金も維持するパターン。
三つ目が、勤務日数だけ減らして、労働時間も賃金も変わらないパターンです。
現在導入されている事例としては、二つ目のパターンが最も多く、次いで一つ目のパターン、最後が働く人にとっては最もメリットが大きい三つ目のパターンです。
例えば、すでに週休3日制を取り入れている大手アパレルのユニクロでは、週休3日とする代わりに、以前は必ずしも出勤ではなかった土日祝日が原則として出勤日になり、1日8時間の勤務時間も10時間に増えています。仕事の進め方によっては、週3日休むと仕事上の支障が出てくるかもしれません。必ずしもメリットばかりとはいえません。
それでも、いくつかの調査結果を見ると、できれば週休3日制を利用したい希望する人の割合は高い様子が見られます。
最も条件が良い三つ目のパターンでおおむね8割以上というのは理解できますが、一日の勤務時間が増える二つ目パターンで6~7割、賃金が減るという一つ目のパターンでも4割前後の人が、週休3日制の利用を希望しています。
この理由を考えていくと、私が個人的に企業勤務と自営の両方を経験しているからよけいに思うのかもしれませんが、「自由に使える時間が増えること、まとまること」が最も大きいのではないかと思っています。人間の根本的な心理として、「時間の使い方の制約」は、実は人間にとって最も苦しいことの一つだと思うからです。
例えば、私自身の今の働き方は、顧客との契約で決められた生産物やコンサルティングを、品質と成果を伴う形で提供してさえいれば、そのやり方は一切問われませんが、仕事の仕方としては、時間が足りなくて、夜中も週末も関係なく仕事をしなければならない時があります。しかしその一方で、やる気が出ないという理由だけで、平日の昼間でもボヤっとしていたり遊んでいたりすることがあります。
仕事とプライベートが区別しづらいことがたくさんありますが、それらの時間配分はすべて自分が決めています。そのせいか、忙しい、時間が足りないと思うことはあっても、縛られたり制約されたりしている感覚は一切ありません。
これが企業勤務となればそうはいきません。仕事が忙しくても暇でも、所定就業時間内は必ず会社にいなければなりません。最近はテレワークが増えて、以前ほどではなくなりましたが、それでも通勤時間には多くの人が一斉に動くので、移動の時間効率が悪く余計な体力を使います。残業でもみんなが帰らないから自分も帰れない付き合い残業など、合理的とはいけない時間的制約の話がたくさんあります。
誰でも多かれ少なかれ、時間の自由を縛られている感覚があり、それが好ましくないと本能的に感じています。そこから、働き方としては多少大変になっても、時間的な自由度が増えそうな「週休3日制」が望まれる理由のように思います。
雇われて働く限り、すべてが自由になることはありませんし、「週休3日制」で、本当に自由度が増すのかはわかりません。それでも、「時間の使い方で本人に委ねられる部分が増える」という心理的な要素は、意外に大きいように思います。自由度が増す実態が伴えば、なおさら好ましいことでしょう。
「時間の自由度」は、実は人間にとって、最も大事なことではないかと感じます。
このコラムの執筆専門家

- 小笠原 隆夫
- (東京都 / 経営コンサルタント)
- ユニティ・サポート 代表
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