やってみなければ「無駄」かどうかはわからないという話
-
特にビジネスの場において、「無駄」は好ましくないもので、できる限り避けるべきものと考えることが多いと思います。無駄なく効率的に物事を進めるのが良いことで、みんながそのことに向けて工夫や努力をしているでしょう。
少し前のことですが、この「無駄」について書かれた二つの記事を目にしました。
一つは昨年107歳で亡くなった著名な女流画家の篠田桃紅さんの、「103歳になってわかったこと」という著書が紹介された記事です。
その内容を要約すると、
「人は用だけを済ませて生きていくと、真実を見落としてしまう」
「雑談や衝動買いなど、無駄なことを無駄だと思わない方がよく、無駄にこそ、次の何かが兆している」
「人は、寄り道をしたり、道草をくったり、どん底を味わったり、失敗や嫌な目に遭うという、人生の無駄を経験するからこそ、人としての味や深みが出る」
「もし、やることなすことすべてうまくいき、効率的で全く無駄のなかった人生を過ごした人がいたとすれば、およそつまらない人間が存在していることになる」
などとありました。
「無用の用」という老子の言葉があり、一見すると役に立たないようなことが、実は大きな役割を果たしていて、無駄のある人生も時にいいものだとされていました。
そしてもう一つは、オリックスグループの元CEOの宮内義彦氏と、この時はまだ現役だった大リーグのイチロー選手との対談記事です。
ビジネスパーソンとして無駄な時間が嫌いという宮内氏に対して、イチロー選手は
「自分はいかにムダな時間を過ごすかということを大事にしているところがある」
「最初からあるべき姿に到達するのは不可能で、まずはムダな時間を経験して、そこから削ぎ落としていくことによって、ようやく自分の行きたいところに近づけるのではないかと思う」
「合理的に考えすぎてムダの生じないような進み方をしようとすると、結局近づくことすらできない」
という話をしています。
宮内氏は「何がムダなのかは結局、やってみないとわからない」と同意していました。
私自身も、どちらかというと「無駄なことはできるだけ避けたい」と考えるタイプですが、独立して仕事をするようになってからは、「何が無駄で何が無駄でないかは、長い時間が経ってみないとわからない」と思うことが多くなりました。
年令とともに多少経験が増えたとか、仕事を他人任せにできなくなったとか、そう考えるようになった理由はいくつかあるように思います。
特に仕事に関わることでは、自分なりの計算のもとにやったことが、思いのほかうまく行かないことが数々ある一方、たまたま出会った人たちから思いがけない話をもらったり、たまたま気まぐれで参加していたことが、かなり後になってから役に立ったりすることがあります。
無駄にならないようによく考えておこなったことが無駄になり、逆に無駄だと思っていたことがそうではなかったりします。
そんな経験は誰でも一つや二つはあると思いますが、私がこの二つの話から学んだのは、「その時は無駄だと思っても、とりあえずやってみればどこかで役に立つことがある」「やってみなければ、それが無駄かどうかはわからない」ということです。
私自身のことで言えば、「何にでも好奇心を持って」とはなかなかいきませんが、人との出会いやお付き合いは、無駄と思わず取り組むことを心がけています。実際にそのおかげで良いことがたくさんありましたし、それはずいぶん時間が経ってからということもありました。
相変わらず役には立っていなかったり、つながりが疎遠になったりしているものは多々ありますが、それが無駄かどうかは、今の段階ではやっぱりわかりません。
「やってみなければ、それが無駄かどうかはわからない」という言葉は、常に心に留めておきたいと思っています。
このコラムの執筆専門家
- 小笠原 隆夫
- (東京都 / 経営コンサルタント)
- ユニティ・サポート 代表
組織に合ったモチベーション対策と現場力は、業績向上の鍵です。
組織が持っているムードは、社風、一体感など感覚的に表現されますが、その全ては人の気持ちに関わる事で、業績を左右する経営課題といえます。この視点から貴社の制度、採用、育成など人事の課題解決を専門的に支援し、強い組織作りと業績向上に貢献します。
「社員にやる気を出させるヒントになるエピソード集」のコラム
時代とともに「マナー」は変わる(2024/02/29 23:02)
「若者を認めないと上の世代は生き残れない」という話への納得(2023/12/20 21:12)
「良くない個人評価の共有」は教育になるのか(2023/10/05 10:10)
“本来の成果主義”には「成果を高めない自由もある」という話(2023/09/14 11:09)
古くても残った物が価値を生むこともある(2023/07/05 22:07)
このコラムに関連するサービス
当事者では気づきづらい組織風土の問題をアドバイス。同テーマ商品の対面相談版です。
- 料金
- 6,000円
「今一つ元気がない」「何となく一体感がない」など、職場の風土や雰囲気に関する悩みについては、当事者しかわからない事情とともに、当事者であるために気づきづらい事もあります。これまでのコンサルティングで、活気を維持する、活気を失う、活気を取り戻す、という様々な事例、プロセスを見た経験から、会社状況に合わせた原因分析、対策をアドバイスします。(同テーマのメール相談を、より詳細に行うための対面相談です)
このコラムに類似したコラム
「他人の残業」は無駄で「自分の残業」は必要? 小笠原 隆夫 - 経営コンサルタント(2020/11/03 08:08)
管理部門が過剰な会社と軽視する会社 小笠原 隆夫 - 経営コンサルタント(2019/04/23 08:00)







