企業組織においては、人事、総務、経理、システムといった直接部門の業務を支援する部門があり、「管理部門」「間接部門」「バックオフィス」などと呼ばれます。
この管理部門にどのくらいの体制や予算規模で取り組むかは、常に議論されることです。強い組織は管理部門が中心であるなどと言われたり、あくまでサポート部門として扱われたり、手厚い要員体制を取る会社から徹底的にスリム化を目指す会社までいろいろあります。
私は管理部門が過剰と思われる会社と軽視する会社のどちらも見てきていますが、結局どちらも業績を伸ばせません。
過剰な会社では、生産性向上や効率化の掛け声はあっても、結局その体制に合わせてみんなで仕事を分け合い、あまり意味のない無駄な仕事を作り出します。これは必ずしも現場の当事者が原因ではなく、経営者や管理者が無駄なことをさせている場合もあります。システム化されていても、それが中途半端で、余分な手作業がいろいろ発生していることもあります。生み出す価値に対して、時間も費用もかかりすぎている感があります。
逆に管理部門が軽視されている会社では、ギリギリの要員体制で動いているため、生産性向上や効率化の取り組みをする余力がありません。そもそも管理部門に投資する発想がないので、アナログな作業をひたすら人手に頼ってやっていたりします。
経営判断に必要な情報の取りまとめが遅かったり、そもそも情報量が少なかったりしますし、そのこと自体に気づいていないことさえありますから、そんな機会損失も含めて考えると、同じく生み出す価値に対して、時間も費用もかかりすぎているといえます。
考え方はそれぞれ正反対であるにもかかわらず、結果はあまり変わりません。
こればかりは、状況を見ながら適切にバランスを取っていくしかないのだと思いますが、最近ある会社でこんなことがありました。
どちらかといえば、管理部門の体制が過剰気味の会社でしたが、経営者が変わり、管理部門に対する見方が効率重視の方向に大きく変わりました。そこでまず行われたことは、管理部門の人員削減のための配置転換でした。
全社の人数から算出した適正な管理部門の人数(あくまで新社長が考えた適正人数)を、各部門に割り振るということを、とにかく人数ありきで実施しました。
そもそも過剰な体制だったので、無駄や非効率があることは間違いありませんが、業務プロセスの見直しを一切しないままでの人員削減、配置転換ですから、それまでその仕事を担当していた人が、ある日から急にいなくなる訳です。
仮に無駄かもしれない仕事であっても、それを現場だけの判断でやめてしまうことはできず、いなくなった人の仕事は、とりあえず残った人で分け合うしかありません。
分担を決めたからといって、不慣れな仕事が急にできる訳もなく、当然仕事は回らなくなります。現場の忙しさはどんどん増していき、にもかかわらず生産性や効率は、より一層下がっていきます。
組織変革といえば聞こえは良いですが、極端から極端へ、しかも段取りを無視しておこなったため、もともと良いとは言えない状態だったものが、さらに悪化していってしまいました。
この会社は今、いろいろな意味で非常に厳しい状況に置かれているようです。原因はいくつかありますが、管理部門の状況が組織全体を左右するということは、確実にあります。
管理部門をどう位置づけるか、その重みは会社によっていろいろです。ただ、直接的な価値は生み出さなくても、組織全体に大きな影響を与える存在であるということは、認識しておいた方が良さそうです。
このコラムの執筆専門家
- 小笠原 隆夫
- (東京都 / 経営コンサルタント)
- ユニティ・サポート 代表
組織に合ったモチベーション対策と現場力は、業績向上の鍵です。
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