「若者を認めないと上の世代は生き残れない」という話への納得
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ある書籍の紹介記事にあった話で、「最近の若いやつは・・・」という言葉に関するものです。
記事によれば、上の世代がこの言葉を口にした段階で、終わりの始まりだと言います。
知っている人も多いと思いますが、この手の苦言はエジプトの古代遺跡からも同じことが書かれたものが見つかっていて、時代を問わずに共通した話だと言われます。
この昔からの苦言について書かれた一節に、私はとても納得してしまいました。
それは「あとから生まれてきた者の方が優秀なのは当たり前で、もしそうでなければ人間はとっくに絶滅している」というものです。
もしも「昔の方が良かった、優れていた」との言い分が正しいとしたら、それは進化でなく退化であり、スケールダウンを繰り返している生物が生き残るわけがないと述べられていました。
動物でも植物でも、時代や環境に合わせて成長を続けてきたから生き残れるわけで、後から生まれた「年下」の方が「種(しゅ)」として優秀なのは、自然界のルールだとされていました。
若者世代への批判は、ほとんどが「進化への乗り遅れ」であり、「年下の方が優秀」という事実は、認めたくなくても、認めなければならないとされていました。
否定する年長者はいるでしょうが、私はその通りだと思いました。
例えば、「最近の子供はひ弱で体力がない」などと言われます。体力テストなどをすると実際にそういう結果が見られることもあるようですが、それでも人間の寿命は延びています。
もしも本当にひ弱で体力がなくなっているとしたら、それは人間が絶滅に向かい始めたことになります。しかし、「人生100年時代」などと言われている今のところは、その兆候はありません。
「若者が本を読まなくなった」と言いますが、SNSやネット上の情報など、読んでいる文字数自体はかなり多いという話を聞いたことがあります。情報の取り方が変わってきたということでしょう。
「文章が書けない」とか「会話が下手」などという人がいますが、その行為自体が他の方法に置き換わっていたり、必要性が薄れていたりするのかもしれません。
「ナイフで鉛筆が削れない」「栓抜きで栓が空けられない」「缶切りが使えない」などは、今の時代でそれができなければ困る場面はほぼありませんから、そのことを取り上げて「今どきの若者は物を知らない」などと言うのはかなり筋違いです。
「昔の方が優れていた」「今の方が劣っている」と思っても、それは目の前に見えている局面だけのことで、もっと大きな流れの中では実は進化していることなのかもしれません。
もしも「最近の若いやつは・・・」と言いたくなることがあったとしても、いったん冷静になって、「なぜそうなのか」を考えると、若者の方が理にかなっていることが数多くあります。
新しい物事への順応性は、若い世代の方が間違いなく上です。それは生き物にとっての「進化」です。
上の世代は「年下の優秀さ」を、もう少し理解しておかなければならないと思います。
このコラムの執筆専門家
- 小笠原 隆夫
- (東京都 / 経営コンサルタント)
- ユニティ・サポート 代表
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