「得意なことしかやりたがらない」という話とつながるいくつかのこと - 人材育成全般 - 専門家プロファイル

ユニティ・サポート 代表
東京都
経営コンサルタント
03-4590-2921
※お電話の際は「"プロファイル"を見た」とお伝え下さい。

注目の専門家コラムランキングRSS

対象:人材育成

専門家の皆様へ 専門家プロファイルでは、さまざまなジャンルの専門家を募集しています。
出展をご検討の方はお気軽にご請求ください。

「得意なことしかやりたがらない」という話とつながるいくつかのこと

- good

  1. 法人・ビジネス
  2. 人材育成
  3. 人材育成全般
社員にやる気を出させるヒントになるエピソード集 現場の事例・私の体験

 もう何年も前に聞いたことですが、その当時の新入社員を少しきつめに指導したら、「私たちは褒めて育てられてきた世代なので、そういう言い方をされるとやる気をなくす」と苦情を言われたという新人研修担当者の話がありました。

 褒めることは大事ですし、成長が早まる効果が期待できることは理解していますが、相手から「褒めること」を要求されるとなると、果たしてそれが正しいやり方なのかとついつい疑ってしまいます。

 

 この話と似た印象を持つ話を、ある企業の役員クラスの人から聞きました。

 それは、「最近はみんなが自分の得意なことしかやりたがらなくなっている」という話です。これは決して若手に限ったことでなく、30代、40代の比較的経験を積んだ人でも、同じことがあるようです。

 その理由には、たぶん「失敗をしたくない」という本人の意識があり、「失敗に寛容でない」という環境があり、失敗で実際に評価が下がって収入が減ったりすることがあるからです。最悪は仕事を干される恐れなどもあり得るのでしょう。当然ですが失敗して褒められることはありません。

 

 その一方、「失敗が人を育てる」という人は数多く、著名な経営者のインタビューなどを見ていても、過去の失敗経験がその後の自分の成長につながった、人間的な幅を広げることができたと語る人が大勢います。

 そうは言っても、失敗をちょうどよいさじ加減で制御して意図的に経験させるというのは、相当な条件が整わなければなかなか難しいことです。やはり失敗はしないに越したことはありません。

 人材育成の一環としては、「失敗」を使うのは難しいということで、「失敗経験による成長」は、どうしても結果論のようなところがあります。

 

 これはあくまで私が思うことですが、自分が得意なことは好きなことでもあり、苦手なことは嫌いなことでもあり、人間は嫌いなことよりも好きなことに取り組む方が楽しく、楽しい方が身につきやすく、他人にはつらいことでも自分は苦にならず、そうなれば結果や成果も出やすくなります。これは会社にとっても社員にとっても好ましいことです。

 

 ただし、本人の意志だけで取り組む範囲を「得意なこと」に限定し始めると、少し話が違います。それは「得意だと自覚していないことに取り組まなくなるから」です。既知のこと、経験したことばかりでは、それを深めることはできても幅を広げることはできません。

 実際にやってみた結果、「不得意だからやりたくない」というなら話はわかりますが、一度は経験して見なければ、そもそもそれが得意か不得意かはわかりません。また、自分では不得意だと思っていても他人から見る目は違っていて、無理やりやらされたら意外に向いていたなどという話もあります。

 

 「得意なことしかやりたがらない」というのは、裏を返せば「未知のことを避けたがる」ということです。未知の経験には失敗がつきものと考えれば、それを避けるのは「失敗を恐れる」という考えにつながります。失敗は基本的に「褒められて育つ」にはつながりません。

 

 「得意なことだけをやりたい」という傾向は、これまで言われてきた「失敗を恐れる」「叱られたくない」ということと共通している感じがします。

 「褒めて育てる」は、基本的には正しいと思いますし、「失敗したくない」「得意なことに集中したい」という気持ちも十分理解できます。ただ、働く人たちの意識が、狭く保守的な方向ばかりに向かってしまっては、広い意味での仕事の能力は低下していきます。

 

 得意不得意、褒めるるなど、どれもバランス次第ですが、どこが適切なバランスなのかを判断することには難しさを感じます。

 

 

カテゴリ このコラムの執筆専門家

(東京都 / 経営コンサルタント)
ユニティ・サポート 代表

組織に合ったモチベーション対策と現場力は、業績向上の鍵です。

組織が持っているムードは、社風、一体感など感覚的に表現されますが、その全ては人の気持ちに関わる事で、業績を左右する経営課題といえます。この視点から貴社の制度、採用、育成など人事の課題解決を専門的に支援し、強い組織作りと業績向上に貢献します。

03-4590-2921
※お電話の際は「"プロファイル"を見た」とお伝え下さい。

カテゴリ 「社員にやる気を出させるヒントになるエピソード集」のコラム

カテゴリ このコラムに関連するサービス

対面相談 【無料】250名以下の企業限定:社員ヒアリングによる組織診断

中小法人限定で当事者には気づきづらい組織課題を社員ヒアリングで診断。自社の組織改善に活かして下さい。

料金
無料

組織の課題は、当事者しかわからない事とともに、当事者であるために気づきづらい事があります。これまでの組織コンサルティングで、様々な組織課題とその改善プロセスにかかわった経験から、貴社社員へのヒアリング調査によって組織課題を明らかにし、その原因分析や対策をアドバイスします。予算がない、依頼先を見つけられないなど、社外への依頼が難しい中小法人限定です。社員ヒアリングのみで行う簡易診断になります。

【無料】250名以下の企業限定:社員ヒアリングによる組織診断

このコラムに類似したコラム

「失敗」「挫折」の体験は成長に必須か? 小笠原 隆夫 - 経営コンサルタント(2023/10/26 09:10)

「褒めて育てる」の弊害という話 小笠原 隆夫 - 経営コンサルタント(2020/07/21 08:00)

危険は「排除するか」、それとも「触れさせて学ぶか」という話 小笠原 隆夫 - 経営コンサルタント(2020/03/31 08:00)

スポーツだけでなく会社にもある「練習のための練習」 小笠原 隆夫 - 経営コンサルタント(2023/09/06 21:12)

「見て盗め」と「手取り足取り」の使い分け 小笠原 隆夫 - 経営コンサルタント(2023/03/30 21:19)