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危険は「排除するか」、それとも「触れさせて学ぶか」という話

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社員にやる気を出させるヒントになるエピソード集 私の思い・考え

 数年前ですが、あるサイトに「昭和の遊具が危険すぎる」という記事がありました。私たちの世代が、子供の頃に思いっきり遊んでいた記憶がある遊具の写真が並んでいます。

 初めは懐かしい思いで見ていましたが、今あらためて見ると、確かに何の安全対策もなくて危険そうです。当時は実際にけがをした子を見たことも、自分自身がけがをしたこともありました。

 

 その記事に関するツイートで、こんな書き込みがありました。

 「昭和の遊具。いつか誰かが怪我するような構造だけれども、子供たちはとても楽しそう。危険なものを排除するのか、危険に触れることで使い方を学習するのか、どちらが子供にとって良いのだろうか」

 

 私自身は、こういうもので実際に遊んでいた世代で、確かに多少のけがはありましたが、「危ないものを何でも撤去して遠ざける」という最近の流れには、少し違和感を持っています。

 ただ、今の子供たちとは平均的な体力も違うでしょうし、これらの遊具で大きなけがをしたり、中には亡くなった子もいるという話を聞くと、それもやむを得ない気もします。

 

 このところ、企業の人材育成の中でときどき出てくる言葉に、「修羅場体験」「失敗経験」というものがあります。精神的にも肉体的にも相当に厳しい、何をどうしたら良いかの判断もつかないような経験をして、それを乗り越えてきた人材は力量が圧倒的に高いという話です。

 経営危機を体験した社長や、プロジェクトの失敗で左遷された管理職など、困難を克服してきた人たちがこの範疇に入るのでしょう。「失敗経験が人を成長させる」といいますが、そういうことは確かにあります。

 

 ただ、これを実際に人材育成の一環としてやろうとするのは、かなり難しいことです。失敗しても良い仕事は絶対にありませんから、最終的に取り返せる程度の失敗、大きな影響がない程度の失敗に収まるように、うまくコントロールした中で失敗経験をさせることになります。しかし、そんなに都合が良い失敗はなかなかありません。

 

 一般的な人材育成であれば、ある目標を設定し、それに対しての経過時間と到達度を測り、達成度を評価しながら、次の目標に向かわせるというような取り組みになるでしょうが、それはあえて失敗体験をさせようということではありません。

 目標未達を失敗だといえばそう取れないことはないですが、これは前段の失敗体験とは別の物です。偶然起こった失敗を指導材料にすることはできても、意図的に失敗させるのはかなり難しいことです。

 

 そんな様子とつながって、最近の企業での人材育成も、この「昭和の遊具」と同じことが起こっています。どちらかといえば危険を取り除き、失敗をさせないように、自信をなくさないように育てていこうということです。

 「今どきの若者論」でひとくくりにするのは良くありませんが、真面目で打たれ弱い傾向があるとされる人たちに合わせた指導方法なのかもしれません。

 

 「危険は排除するか、それとも触れさせて学ぶか」の答えとして、私は「両方ともに必要で、そのバランスは状況に応じて変わる」と思っています。

 遊具のように、公共の場にあって誰でも利用する可能性があるものは、利用者全員にとって安全な状態にしなければなりませんが、例えば体操選手に「高い鉄棒は危険だから禁止」とはしないように、育成の視点ではその人のレベルに合わせたアレンジが必要です。

 

 意図的に失敗させるのは難しいことですが、今よりもう少しだけ、「危険に触れることで学ばせる」という姿勢も必要ではないでしょうか。

 

 

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